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□或る三人の喜劇
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「合宿?!」


ある日、日番谷・松本・斑目・綾瀬川の四人が、来るべき藍染率いる破面軍との闘いに備え修行をしている場所に、浦原商店にて別行動をしていた阿散井が現れ、隊長の日番谷に話を持ち出してきた。

曰く――“合同で合宿しませんか?”


「ええ。その方がお互い修行の効率も上がりますし、場所も浦原さんが『ウチを貸しマスよ』と言ってくれてますし、どうっすか?」

「そうだなぁ……」


うーん、と日番谷は貌の良い顎に白く細い指を当て考え込む。


「ハイハーーイ、僕ハンターーイ!今まで通り此処でやればいいと思いまーーす!」


今まで日番谷と阿散井のやり取りを黙って聞いていた綾瀬川が手を挙げて反対した。

(つーか、美しい僕と日番谷隊長以外要らないんだよね……)

綾瀬川弓親、密かに日番谷冬獅郎を付け狙っていた。


「…そうか。斑目、お前は?」


綾瀬川の意見を聞いた日番谷は隣に居た斑目一角に尋ねた。


「んーー。俺も反対っすね」


(恋次、お前巫山戯けんなよ!只でさえ弓親のヤローが俺と日番谷の仲を邪魔ばっかしてきて、うぜぇーのにこれ以上邪魔モン増やして堪っか!!)

斑目一角、彼もまた綾瀬川同様に日番谷冬獅郎LOVEだった。

(てめぇーらばっかオイシイ想いしてんじゃねぇよ!!)

そして、其れは阿散井恋次も以下同文であったので、三人は火花を散らし睨み合う。

(バカばっか………)

紅一点である松本乱菊は三人の心情を具に読み取り、呆れた。
溜息を一つ吐くと、


「で、隊長どうします?」


彼女は争いの原因である日番谷に訊く。


「そうだな。ちなみに松本はどうだ?」


瞬間、今まで睨み合っていた三人の視線の矛先が松本へ一斉に集中する。

律儀に部下全員の意見を訊く日番谷の態度は上司としては其れは其れは素晴らしいと思う松本であったが。

(この際、私のことは放っといて欲しかったわ…)

松本は彼等の鋭い視線が自分の背中に突き刺さっているのをひしひしと感じていた。
そんな謂わば、“針の筵”状態に晒されてしまった松本は――


「……………あたしはどちらでもいいです。隊長にお任せします……」


――結局、どっちつかずに逃げた。

(((ちっ!上手いコト逃げたか……)))


「そうか?………うーん、特に断る理由も実は無いんだよな」


((え゛………俺(僕)の意見、無視っ?!))


「じ、じゃあ…!」


斑目・綾瀬川の二人が内心でショックを受ける中、一人、阿散井が期待に瞳を輝かせ日番谷を見詰めた。
日番谷は阿散井の期待に応える様に頷き、


「……いいぞ。合宿」


阿散井の申し出を受けた。


「本当ですか?!」

「ああ。――前から浦原には一遍逢ってみたいと思ってたからな…」

「「「な、何だってぇーーー!!!!!」」」


日番谷の何気無く発した言葉に三人は衝撃を走らせる。

(((日番谷隊長の好みのタイプって、浦原みたいなのか??!!)))


何故か打ち拉がれている様子の三人を見て、日番谷は瞳を瞬かせると小首を傾げた。


「なぁー……松本」

「何ですか?」

「俺、変な事言ったか?」

「いえ、全然。隊長は何も可笑しな事は仰っていません。気になさらないで下さい」


アイツ等馬鹿ですから、と言う松本に「そうだな」と日番谷も納得し深くは考えなかった。





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