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□少年は、還る(後編)
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黒崎は瞬歩で瀞霊廷を一気に駆け抜け、そして流魂街へと出ると心当たりを片っ端から捜す。
が、日番谷の姿は見当たらなかった。
(くそっ!………もう後は――)
――今日、行ったあの場所……
(でも、もし、そこに行っても居なかったら………)
立ち止まってしまった黒崎に雨が容赦なく彼の身体に降り注ぐ。
雨が身体中を伝っていくのを感じながら、黒崎は悔しさに唇を噛み締めた。
思い知らされる。
(オレは……“アイツ”のことを何も知らねぇー……)
今の日番谷がどんな事を思い、何を考え、何を好むのか――
(いや、そうじゃねぇー……オレは………)
「知らない」のではなく、「知ろうとしなかった」のだ。
ただ、今の日番谷が『日番谷冬獅郎』じゃないというだけで。
先程、阿散井に殴られた頬が、ずきずきと脈打つ様に痛む。
(恋次の言う通りだ。オレは何をしてたんだ………)
オレは……
オレ、は……
黒崎は立ち止まった侭、暫く雨に打たれていたが急に何を思ったのか、首をぶんぶんと横に振り水を払った。
(今はそんな事を考えてる場合じゃねぇっ!!)
そして気合を入れ直すべく、パンパンと両頬を勢い良く叩く。
「―――――っ!」
同時に殴られた箇所も真正面に叩いてしまい、黒崎はその場に蹲り悶絶する。
(本当、オレって馬鹿………)
痛みを無理矢理捻じ伏せ、黒崎は再び走り出した。
(会ったら、たくさん謝るから。だから……)
頼むから、無事に居てくれよ――
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