NOVEL1
□──遠く遠く、鸚哥の姿は
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Dolce Love Song!
(甘く柔らかに愛唄!)
───Old far parakeet
『血濡れの鸚哥』の通り名は、世の不良達の間である意味伝説となっていた。
喧嘩相手の攻撃をまるで飛ぶように避けつつも、鳩尾にしっかりと拳を叩き込んでいる。自らは血を浴びるのみ。痣の一個も付けられない。
その身のこなしは……まるで鳥の如く。
それと赤茶の髪の毛が合わさって、『鸚哥』の名が付けられたのだ。
央人が今まで響にバレなかったのは、彼の入念な計画があったからだ。
学校から帰る時間、
家に着く時間、
響が央人の家に泊まる曜日、
央人が響の家に泊まる曜日、
央人が響を抱く時間、
響が達する時間、
央人が響のナカで達する時間、
央人が後処理をする時間、
そして『血濡れの鸚哥』が繰り出す時間さえも、すべて央人の計画の元に出来上がったシナリオだったのである。
行為中の汗まみれの央人の姿は、響が朦朧としている所為か多少の傷があったとしても気付かない。
また『血濡れの鸚哥』として夜の街を歩くのは、週1回のみ。
その日だけは響と何もしないように計算しているのだ。
それ故に央人は『血濡れの鸚哥』として名を轟かせた。
元々チーム───要するに暴走族───に居た央人は、特攻隊長としてその世界では有名だった。
高校1年のときに響に一目惚れし、彼が血と喧嘩が嫌いだと知ってから一切その時の仲間とは関わらなくなり、遂には完全に族抜けを果たす。
響はそういうことに興味がないし、知ろうともしないから央人にとっては好都合で、自分の恥ずべき過去を好いてる者に聞かれなくて良いのだ。
しかし、つい最近になって央人に恨みを持つ輩が出てきたと現在は堅気の元仲間に聞き、即座に響を危険に巻き込みたくないと思った。
だから再び赤茶の髪に深紅を浴びることを決意したのだ。
全ては愛する人のために
全ては響を傷つけないために
全ては───────
『血濡れの鸚哥』を完全に昔話にするために。
俺は今日も、お前が嫌いな血を浴びる。