NOVEL1

□君の前だけは獣に変化
2ページ/2ページ



「栄純、おいで。髪、拭いてやるよ」


「ん〜」





…極めて平常心を保つ。自分の背中で倉持から栄純を隠すように座らせた。タオルでわしゃわしゃと濡れた髪の毛を拭いていく。俺とかは結構気ぃ遣うほうだからドライヤー使うけど、コイツは違う。放っておくと乾かさずに寝ることもある。増子さんも倉持も気にしない質だから、栄純にあまり厳しく言わないのだ。




「はい、終わり」

「ありがと!」



…上目遣い。
畜生、生殺しかよ。
倉持は(追い出せば)まぁ良いとして増子先輩はもうすぐ監督との話し合いから帰ってくるだろう。この部屋で事に及ぶには危険がありすぎる。





「栄純、投げるか?」

「え、マジで!?投げる投げる!!」

「よし。じゃあ練習場行こう。倉持〜!栄純借りるぞ」



持ってけ!と倉持は片手をヒラヒラ振る。すぐにコントローラーに戻ったけれど。



にこにこ嬉しそうな栄純の手を引っ張って、誰も居ない屋内練習場に連れ込む。薄暗いまま、電気は付けない。




「なぁ御幸、電気付けねぇのか?」


「うん、付けない」



ようやく栄純の手を離して、俺と向き合わせる。そして何の罪もない、薄く開いた唇に噛みついた。



「むぅ……!?」


「色気ねぇ声…」


「っアンタが球、受けてくれるって言ったから付いてきたのに!!」


「ごめん、あれはお前を此処に連れ込むための口実。」


「帰る!」




これじゃ倉持先輩とゲームしてたほうがマシ!と栄純は帰ろうとする。でも、それは絶対にさせない。何しろ俺が我慢出来ねぇ!


栄純の右腕を乱暴に掴むとそのまま包み込むように抱き締めた。逃げようとして暴れるけど、1年と2年じゃあ体の作りも力の付き方も明らかに差がある。無理だとわかったのか息を切らしながら涙目で睨んでくる。




(逆効果だっつーの、バーカ)





まったくコイツはいつだって可愛くて仕方がない。



ふ、と笑って耳の裏を舐めあげる。栄純はここが一番弱い。




「ひゃうっ……!」

「なぁ、栄純……?」



呼ばれても答えられないほど腰砕けになっているらしく、へたりとその場に膝をついてしまった。俺も一緒に座り込み、無垢な白い首筋に唇を這わす。


そして、囁く。








「知ってたか?…─誰かに惚れてる男ってのは、みーんなオオカミなんだぜ?」





俺をオオカミにさせたお前の所為だからな。






男はオオカミなのよ気をつけてなさいー♪って曲ありましたよね◎あ、栄純も男じゃんって突っ込みはなしな方向で!
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ