NOVEL1
□肝試し5の令状
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令状1.多少嫌がる人がいても本格的に恐いところへ行く事。
「肝試しィ───!?」
青道高校青心寮。
突如、響き渡ったのは1年沢村栄純の絶叫とも言えるソレは、彼が“肝試し”が嫌いであるという事実を明らかにしていて、その行事を計画していた上級生らを笑わせた。
蒸し暑い夏。
毎年恒例の合宿は栄純ら1年にはとても過酷な試練であったが、ひとつ壁を越えたような達成感は気持ちよかった。そして来年には先輩たちのように倒れないような身体になっているのか、と心踊っていたのだが。
「そんなこと聞いてないっす!!」
「ヒャハハ、言ってねぇもん。知るはずねぇな」
食堂。
レギュラーが陣取るそこはガヤガヤと騒がしい。それもそのはず。今の今までそんなことを知らなかった栄純が、同室の先輩である倉持にからかわれているのだから。
「ちょ、これマジなんスか!?」
「うむ。俺が1年のときには既に恒例行事だったぞ?」
助けを求めた先の増子も、いささか楽しそうで栄純はすがり付く手を引っ込めた。
すでに時刻は午後7時を回り、ちょうど薄暗くなり始めた時間帯で肝試しには最適だ。
栄純はおろおろと目を泳がす。
その様子に倉持をはじめとした去年栄純と同じ立場にあったメンバーはポーカーフェイスを保ちながらも嫌みに口角をあげた。
「よう、沢村!」
「…伊佐敷先輩」
ぽん、と栄純の肩に手を置いたのは伊佐敷。
副主将2人が並ぶと何故か威圧感がある。
もしかしたら肝試し自体禁止とか!
はたまた監督の機嫌を損ねて禁止とか!
淡い期待をしながら、伊佐敷の言葉を待った。
「去年は倉持も御幸のヤローも驚かなくてよ!今年は楽しませてくれよな!」
「え…、」
そんな……。
空しく栄純から離れていく豪快な先輩は期待していた言葉を発することなく、自分の席に戻っていった。
「…だいじょぶだよ、栄純くん。俺もちょっと怖いし」
「春っち……」
「そんな怖くないと思うけど…平気だよ」
「降谷……」
彼らも先輩から肝試しについて聞いたのか、自分達以上にそういうものを苦手とする栄純に同情して、声をかける。
「…コースとかは決まってるんですか?」
「あ〜今年はどうやらいつもと違うみたいなんだよな。」
「?」
倉持が困ったように口をへの字に曲げる。
いつもとは違う。
どういうことなんだろうか。
「去年までなら普通にグラウンド一周+学校一回りなんだけどよ、今年は」
ごく、と喉が鳴る。なんか嫌な予感がして、冷や汗が背中を流れた。
「ここだけの話、亮介さんが下見に行って決めたらしい────」
予感、的中。
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