NOVEL1
□肝試し5の令状
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令状3.肝試しは基本二人で仲睦まじく。
この肝試しのルールは簡単。
前のペアが出発してから10分が経ったらスタート。
まず、学校を一回りした後、校門を抜け、そのまま近所の寺に行く。
最初に手渡されるカード(ペア両人の直筆で名前を書いたもの)を寺の祠に積み重ねていく。
そして最後のペアはそのカードを全て持ち、帰ってくる。
これで青道野球部合宿恒例肝試しは終了だ。
特に脅かし役がいるわけでもなく、ただその場の雰囲気を楽しもうということらしい。
もちろんそれはペアになった者の性格にもよるのだけれど。
「じゃあペアを決めるぞ」
完全に空を闇が覆い、確かな明かりは寮の部屋から漏れるものだけだ。
スタート地点である寮の入り口で参加者たちは思い思いの表情をしていた。
結城が参加者全員の名前が書かれた紙が入っている袋を振った。
栄純はというと右に春市の、左に降谷の手をものすごい力で握っていた。
そんなに怖いならやめればいいのにね、と2人は目配せをする。
そして運命のペアが決定した───
『一組目:増子&倉持
二組目:伊佐敷&沢村
三組目:降谷&御幸
四組目:クリス&春市
五組目:亮介&結城』
となった。
ちなみにクリスが作成した厳正なるあみだくじの結果である。
「純さん、と……?」
「よかったじゃん、栄純くん!」
「幽霊も逃げてくかも」
ぽん、と降谷が安堵の声をもらす栄純の肩に大丈夫だよと触れる。
そうかも!
これが御幸や倉持だったら即座にクリスに行かないと言っているところだ。
もちろん亮介は論外である。
「純さん!」
「お、おうっ!」
小走りでかける栄純に伊佐敷は頬を染めたが、すぐに抑える。
周りの視線が突き刺さるように痛いのだ。
特に2年生コンビとクリス!
各ペアにカードが配られる。
伊佐敷は自分の名前を書き、ぶっきらぼうに栄純に渡した。
「今から地図を配る。各ペアの上級生に渡すから下級生は従うように。」
伊佐敷の手にそれがわたり、いよいよ始まる。
一組目の増子と倉持が一歩踏み出した。
「じゃあ行ってきます」
「うむ。」
まずは学校一周。
────暗闇の中で倉持は意地悪く笑った。
いってらっしゃいと小さく手を振る栄純は、この先に待ち受ける恐怖を知る由もなかった。
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