NOVEL1

□肝試し5の令状
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令状4.途中逃げ出しは絶対禁物。






「…おい、沢村」

「、なんすか…っ」


暗い暗い学校周り。
栄純はがっしりと伊佐敷のTシャツの裾をつかんだまま離さない。

栄純に心奪われている彼にとってはこれ以上ない幸せな出来事だった。
しかし内心不安で仕方なかった。
なぜなら一番最初にスタートしたのは、他ならぬ倉持洋一であったからだ。

彼なら伊佐敷がこういう系統のものが大の苦手であるとわかっているし、自分の悪友である亮介とも通じている。


しかも栄純に惚れている者なら誰だって美味しい場面を見られたら…。


想像するだけで恐ろしい!

思わず鳥肌がたってしまった二の腕を擦る。




懐中電灯の光だけが頼りだ。
しかしその道標もなぜかもの足りないような気がして、首をかしげてしまう。



パキキ、



「ぎゃ───!」

「木の枝を踏んだだけだ、沢村」


小さな音に出さえ体を跳ねさせる彼を見て、もしかしたら自分よりも怖がり──こういうものが嫌いなんだ、と思う。



「おい、本当にダメだったら帰っていいんだぞ?」

「イヤっす!戻ったら何言われるかわかんないっすから!」


強気な発言をしても、尚も強く握られるTシャツの裾と、流れるのを必死で堪えている涙を見れば、どんなに栄純が苦手か一目瞭然だ。

説得力のない彼の様子にため息をついた。



「……行くぞ」

「はい!お願いしやす!」



ちょっと待て!
お願いされる意味がわからねぇから!






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…兄貴」

「何、春市」

「なんで俺達、栄純くんと伊佐敷先輩の後をつけることになってるの?」


栄純と伊佐敷が仲睦まじく歩く後ろ。
暗闇で向こうからは確認できないだろうが、こちらからはしっかりと2人の姿を確認できる。


彼ら以外の肝試し参加メンバーは、最初からこのつもりだったのだ。
つまり、ドッキリ大作戦である。

もちろん彼らよりさきに出発した増子・倉持ペアも肝試しが始まる以前に見つけておいた寮への近道で戻ってきていた。



「だって俺が見つけたルートで純がどんな反応するか見たいでしょ?ねぇ倉持」

「ヒャハハ!確かにそうっすね!」


伊佐敷・栄純ペアを増子・倉持ペアの後にしたのかというと、ある意味で伊佐敷にプレッシャーをかけたかったからだ。


「さぁて、退屈させないでよ?純…」






にやり。と浮かべた黒い笑みは弟である春市でも鳥肌がたつほどのものであった。







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