NOVEL1
□不安定ラブロマンス
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「おら、タオル」
「────っす」
黙ると雨音のみが聞こえた。
寮にはおそらく彼らしか居ないし、教室では授業が行われている。
おまけに雨も降っているから体育もやっていない。
沢村がワイシャツを脱ぐと、華奢な肩と腰が露になった。
倉持は目を細めた。
ただ、その肩にどれだけのプレッシャーが乗っているのだろうと、その肩にどれだけの期待がかかっているのだろうと。ふと考えてしまった。
加えてヤツのことも。
こんな華奢な体に負担させるなんて、アイツはどうかしてる。
ああもう!御幸は沢村のことを想ってこうしているのに!
そう思うと。
「沢村ぁ……」
「…?」
「わりぃ…」
「え────、!?」
後ろから細い腰に腕を回す。
肩口に顔を埋めて。
冷たくなった肌を暖めるように。
体温を分けあうように。
「せ、せんぱい…っ!?」
「うるせぇ。黙ってろ」
らしくない。
沢村はアイツのモノなのに、守りたいと思ってしまうなんて。
ただ、この笑顔が消えてしまうことが怖いんだ。
「……俺のモンになれとは言わねぇよ?けど、お前が御幸のせいで暗い顔してんのが一番気に食わねぇんだ。」
「………俺はっ」
「わかってるよ。そんなこと言ったって、アイツが好きなんだろ?」
小さく頷く。
揺れた髪からは雨と汗の匂い。
俺は一度それに鼻を寄せると、腰に回していた腕を取った。
「ったく…お前ら2人揃って迷惑かけすぎなんだよ!」
「へ?」
「沢村、なんで御幸がお前から離れてるか知ってんのか?」
「それはっ!…………………なんで?」
この馬鹿が!
俺は深い深いため息を吐くと、沢村の額を小突いた。
小さい悲鳴が聞こえたが、そんなの今は関係ない。
なんで俺はコイツ等のいざこざに巻き込まれてんだよ、馬鹿みてぇじゃねーか。
ま、俺がお節介なんだろうけど。
デスクチェアに座ると足を組んだ。
「御幸はなぁ、お前に被害が及ばねぇようにわざと冷たくしてんだよ」
「は………?」
「てめぇも知ってるだろ?ヤツの熱狂的なファンの女共。アイツ等がどっからか御幸とお前が付き合ってるっつー噂を聞き付けたらしくてよ。まぁそれは事実なんだけど。」
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