NOVEL1

□ボールに込めた想い
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時計は針を進め、現在8時。
部員たちは早々に切り上げ、さぁ夕飯は何かな?というとき。


栄純はグラウンドで降谷の相手をし終えた御幸に近づいた。



「御幸………先輩」

「お、今日はちゃんと先輩って付けたな。偉い偉い」

「子供扱いすんなよっ!………あの、」

「ん?あ、降谷はもう切り上げて良いぜ。メシ食ってこい」

「…はい。ありがとうございました…」


降谷は2人の雰囲気を不思議に思いながらも御幸に向かって脱帽し、食堂へと走った。




「さて降谷も居なくなったことだし。どうした、沢村?」

「あのっ!俺の球受けてくださ…あ、違う!!えと…………俺とキャッチボールしませんかっ!!」

「え、」


御幸の脳内を駆け巡ったのは、数時間前に倉持に言われた言葉。

その意味がようやく理解出来て、思いだし笑いが込み上げた。



「なんだよ。そーゆーことだったのかよ…!馬鹿だな、俺!」

「な……」

「わり、こっちの話。キャッチボールな。オッケー、しようか」

「え!?」



お前が誘ってきたんだろが、と御幸は意外そうな表情で栄純の額を小突く。

今まで使っていたキャッチャーミットでも大丈夫だろうと2,3回ミットの中で硬球を弄ると、ひゅと音を立てて栄純の胸に投げつけた。

栄純は反射的に小脇に抱えていた自分のミットで丁度良い高さに投げられた白球をパスン、と捕る。



そういう状態が何回か続き、ようやく声を発したのは御幸だった。





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