NOVEL1

□番外編
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「………」

「………」


レコーディング機材もある練習室兼レコーディング室。
さきほどから2人は会話をしていなかった。背中合わせに座っているため相手の表情はうかがい知れない。

それに栄純は備え付けの(というか洋一がゲームをするために友人から安く譲り受け、ここに置いてある)テレビをゲームのコントローラーを持ったまま見つめ、何かを考えているようだ。

一也はギターを抱え、手は台座を取って床にあるキーボードの上に。
彼はまず曲から作ることが多いため、この部屋に籠ることは少なくなかった。

キーボードの横にある差し込み口には愛用のヘッドホンが繋がっていて、新曲作りに専念している。



栄純はそんな恋人に少々不貞腐れていた。

そりゃあ俺は大体一也の部屋にいるわけだし。一也のベッドで寝ないと落ち着かねーし。俺の部屋以上に色々知ってるし…。


忙しいのはわかるけど……2日もキスなしってなんなんだよ!?

一也はたぶん俺が寝てる最中にするんだろうけど、俺はそうされるのはあんまり好きじゃなかった。
だってキスしてんのに何でしてるほうだけが[した]って満足すんだよ?こっちの気持ちはどーなるんだ!

すなわち俺は一也としてるっていう瞬間が欲しいわけ。


むむ、と眉を寄せるとカチャカチャとコントローラーのボタンを荒っぽく適当に指で押していく。

テレビ画面では、栄純が操る主人公と思わしき巨大な剣を持った金髪の青年がフィールド内を行ったり来たりしている。

実に意味のない行動をさせていることになる。

はあと息を吐くと一也の背中にぐぐっと体重をかけた。

自分でも小さな駄々っ子のようだと思う。思うけどやっぱり彼にかまって欲しいのだ。



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