NOVEL1

□砂糖より甘いくちづけを
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最初は極めて優しく。
しかし次第にその口内を侵していく。

今まで御幸が舐めていたキャンディーと唾液が混ざりながら、沢村へと伝わった。


「ふ、…あっ」


しっかりと御幸のブレザーを握りしめて、のけ反りながらもしっかりと口づけを受ける沢村。

艶かしい水音が静かな階段に響く。
もしかしたら誰かが聞いているかもしれない、そう感じた沢村は己の身を震わせた。
しかし、御幸のキスに抵抗できるはずもなく、されるままに舌を動かしていた。御幸からのそれはいつだって拒めない。沢村は自分がこの気持ちよさを骨の髄まで知ってしまったからだ、と自覚していた。

ちゅ、と小さくリップノイズを残して、目の前から御幸が少しだけ離れた。

沢村の口内に残ったのは、丸いキャンディーとそれが放つ甘いミルク、そしてキスの余韻であった。


「甘かった?」

「なっ…!」


怒っているのか照れているのか、沢村は今まで以上に顔を真っ赤にして、まだ熱さが抜けない唇を押さえた。

その様子を横目で確認して頬を緩めた御幸は、すっかり気を良くしたのか、再度沢村の腰に腕を回す。


「あーもうお前かわいすぎだから…!」

「っ撫で回すな、コラァッ!」


独特に笑いながらそこから手を離すと、そのままするりと下がり、やわらかに作られた拳を包む。


「さて、いい加減行くか。そろそろクリス先輩も怒るだろ」

「もとはと言えばアンタが…ッ!」

「あ、そうだ。沢村ー」

「なんだよ! ってか話を聞けーっ!」

「Trick or Treat!」


沢村が発した拙い英語ではない。
まるで帰国子女をも思わせるほどの発音は、本場の英語に慣れ親しんでいない彼には一瞬何て言ったのか理解できなかった。
(クリスが教えてくれたときも何度も聞き返して、結局カタカナでホワイトボードに書いてもらったのだ)


「へ…」

「だーかーら! Trick or Treat! お菓子くれなきゃイタズラするぞ! お前、さっき自分も言ったのに覚えてないのか?」

「う…アンタの発音が良すぎてわかんなかったんだよ!」

「そりゃどーも。んで、ガムとかキャンディーとか持ってねえの?」


その言葉にポケットを漁ってみるが、今着ているのは練習着だということをすっかり忘れていた。
そうだ! この間買ったキャンディーが思ったよりも美味しくて、誰にもあげないと決めたから部屋に隠しておいたんだ!(倉持先輩対策である)

しかし、顔を下げているから確実なことはわからないが、これだけは言える。
御幸は今、ものすごく“イイ”笑顔なはず!


「沢村、ねえの?」

「…でも部屋に帰れば、昨日買ったスゲー美味いのがあるんだ!」

「今はないんだ?」

「……ない、デス」


ゆるゆると御幸を見ようとすれば案の定。そこには“イイ”笑顔の恋人が。

そして正面から抱き締められ、顎を上げられる。
喉仏から顎の先まで、御幸の長い指で沿われると、背筋に熱いものが走った。
繋いだほうの手は、当然ながら解放されるはずがない。


「持ってないならイタズラ決定だから」

「まじっ!?」

「おう。マジだよ」


だから、と御幸は続けた。
眼鏡の奥の瞳が沢村を見つめる。

その次に発せられる音に胸を高鳴らせてしまっているから、そらせない。否、そらすつもりもなかった。



「今夜は覚悟しとけ?」



耳元で囁かれた甘い言葉。

その誘惑はずるい。
俺が首を横に振れないことを知っていて、わざとそう言うのだ。

俺も俺だ。
そうだとわかっていても、断れないのだから。



だから、何も言わぬままキスを受け入れると、小さく頷いた。









ハッピーハロウィン!な御沢でした。

この話では御幸さんが時期キャプテンですが、私は倉持さんでも大丈夫かなとも思…ってますが、考えたくないデス。3年生には当分卒業してほしくないですね(笑)

それでは読んでくださり、ありがとうございました◎


ちなみに私の携帯のストラップにはジャック・オ・ランタンが2個います(笑)


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