頂きもの

□心ちゃんより
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開け放たれた窓から心地よい風が流れ込み、読んでいたスポーツ雑誌をパラリとめくった。
外から女子の笑い声が聞こえてくる。そんな初夏を思わせる爽やかな空気の中、倉持洋一は小さなタメ息を漏らした。


「…お前いい加減にしないとマジで殴るぞ」


ジト目で横を見やれば、死んだように動かない物体が机に突っ伏している。


「何とか言えコラ。死体のマネなんて趣味が悪いぞ」

「…えーじゅーん」


情けない声を発する人物に向かって俺は躊躇なく雑誌を投げつけていた。

ゴンッという鈍い音と共にバサリと雑誌が床に落ちる。何枚かのページが抜け落ち机の周りに散乱した。あぁ!!買ったばっかりだったのに!!

そんな悲惨な状態にあっても死体、元い御幸一也は、顔を上げようともしなかった。


「…沢村に【御幸が別れたいって言ってるぞ。】ってメールしてやろうか」

「ざけんな」

「じゃあ、その負のオーラ出すのをヤメロ。だいたい何落ち込んでんだ?」


無残にも抜け落ちてしまったページを拾いながら言う。


「沢村は別に変った様子は無かったぞ?なにお前ら、ものの10分くらいの短い時間でケンカでもしたの?」

「ンな訳ねぇだろ」

「じゃなんだよ。さっきまで意気揚々としてたじゃねぇかよ。久し振りに部活休みだから2人で買い物でも行くか。とか騒いでたじゃねぇか。アレ?そーいや買い物はどうなった?」


その言葉が地雷だったのか御幸が再び机に突っ伏した。


「誘おうと思ったら今日はムリって言われたんだよ。おまけにその理由が【降谷と買い物行くから】だとよ」

「そりゃ飽きられたな」


ヒャハハと笑ってやれば人殺しの目で睨まれた。やめろよ、ただでさえお前の目は怖いんだ。


「だいたいアイツ自覚なさすぎ…。自分がどんだけ周りの奴等に目ぇつけられてると思ってんだ」

「アイツ無自覚で無防備だからなぁー。それで人が寄ってくるからお前も気がきじゃねぇなぁ」

「…邪な考えを持って栄純に近寄る要注意人物その1にお前も入ってるからな」

「ふざけんな!!何でだよ!!」


唸るように言われた言葉に反論する。一番の要注意人物はお前だバカ!!


「あぁ〜ちくしょう。どいつもこいつも敵だ…。クリス先輩までアイツに気があるみたいだし…。俺あの人に勝てる気がしねぇよ」

「…クリス先輩は違うと思う」


あの人は違うだろ…。わが子を慈しむ表情だろアレは。増子先輩も然りだ。


「だいたいアイツなんで昨日泣いてたんだよ…。お前等本当にアイツに酷い事したんじゃないだろうな?」

「…よく、技はかけてるけどな」


そんな事でいちいち泣いてたら大変だろうが。


「あれは、お前のせいで泣いたんだよ」

「俺アイツに何かしちまったか!!?」


意地ワルく口角を上げれば滑稽な程に御幸の顔が困惑に歪む。いくらなんでも余裕なさすぎだ。


「違う、違う」


右手と首を横に振って否定する。どちらかというとアレは沢村の被害妄想だ。




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