NOVEL2

□バレンタイン・キッス
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バレンタイン・キッス
(バレンタイン話)
(※栄純が乙女です)



「………え、御幸ってチョコが嫌いなの?」

「うん。倉持先輩から聞いたんだけど、チョコというより甘いものが嫌いらしいよ。……栄純くん、どうするの?」

「え゙!?」




昼休み。
いつものように春市・降谷のクラスで昼食をとる栄純は、春市から意外なことを聞いてしまった。


現在、栄純は一部には内緒(一軍の全員にはどうやらバレている、らしい)で一軍の正捕手である御幸一也と俗に言うお付き合いをしているのだ。


世間ではバレンタインとお菓子会社の策略(陰謀?)で全国の恋する乙女たちが浮かれている。もちろん、それを待ち受ける男子もだが。


それを目前にして、栄純の恋人である御幸が“甘いものが苦手”らしい。



「栄純くん、御幸先輩にチョコあげるつもりだったら教えておこうと思って。」

「ななな、何で俺が御幸に!?」

「うるさい…」


顔を真っ赤にした栄純に、すでに昼食を食べ終えた降谷が静かに言う。栄純はいつもならそれに喰ってかかるのだが、今回ばかりはそれがない。どうしたんだ、と春市と降谷は顔を見合わせた。




「え、栄純くん?」

「どうしよう………春っち!降谷!」



珍しく(勉強以外で)困って眉が垂れ下がっている。どんぐり型の大きな眼はうっすら膜が張られ、今にも涙が溢れそうだった。




「俺っ!てっきり御幸、甘いの大丈夫かと思ってマネさんにレシピもらったんだ………!そんでもう材料とか買い揃えちゃってて…」



やっぱりあげるつもりだったんじゃん、降谷が呟く。しかし、それすらも耳に入っていないようで、カバッと頭を抱えた。



「あぁもう!なんか俺、恥ずかしくなってきた……!なんでこんなに女々しいんだよ、俺!」




自分と格闘している栄純を見て、春市はふっと息を吐いた。栄純が御幸の話をするときは大体女々しいのだ。恋する女の子もとい、恋する男の子、沢村栄純。彼にこんな顔をさせることが出来るのは、この先、何人ぐらい居るんだろう。いや、恐らくあの御幸一也ぐらいだ。




「とにかく作ってみれば?御幸先輩なら栄純くんが作ったものなら何でも食べてくれると思うけど?」

「春っちぃ………」





かくして本日より栄純の甘くないチョコレート大作戦が決行されるのであった。







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