NOVEL2
□──ったく、うるせーなぁ!
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Dolce Love Song!
(甘く柔らかに愛唄!)
───Crowded classroom!
「…こら、バカップル」
「な!バカなのは央人だけだろ、益岡ちゃん!」
「黙れ。遅刻したのにはそれ相応の理由があるんだろう……なぁ金森?」
「あー…すんません。俺ん家泊まった響が寝かせてくれなかっガフ!」
「央人、それ以上言ったら別れるからな」
「ごめんなさいもうしませんすみません許してください」
「なんかこのやり取り、さっきもやったような……」
「っ………お前ら、遅刻しといて良い度胸してんじゃねーか、あ?───よし、喜べ。今日は1日俺の下僕として生活しろや。決定!」
2年8組の担任、益岡秀司は最強です。
「よお、重役出勤!」
遅刻してきて朝っぱらから夫婦漫才させられてみんなに笑われて、ほんとに良いことない!
ようやく窓側後ろから2番目の自分の席に付くと、後ろの奏林寺 律が響の背中をつついた。
こいつは野球部で毎日朝練も欠かさない。またクラスでも委員長をやるなど真面目な奴だ。今まで一度も遅刻欠席がないらしい。
俺の自慢の幼なじみだ。
「ったく朝から疲れさせんじゃねーよ、央人め」
「お前が言っても只のノロケにしか聞こえないけどなぁ」
「何か言ったかな?律くん」
「いーえ。」
威圧的な声に肩をすくめると律の視線は机の上の本に移った。おそらく野球に関する本だろう。まったく昔からこうだからな。
響も体を正面に戻した。
それと同時に律が顔をあげる。
(……………っっ!?)
律は目を丸くした。
響の長い襟足の隙間から覗く赤いうっ血の痕。
言葉にならない叫びに思わず息を吸って口元を両手で隠した。
(央人ぉ………)
ちらりと央人の席(廊下側の前から三番目)まで羞恥の念を送れば見事に振り返り、にやりと自慢するような笑いを浮かべた。
(そんな羨ましいだろ!って感じの顔してんじゃねーよ)
奏林寺 律。
響と彼は幼なじみで、央人の相談相手である。
板挟みの苦労人は辛いのだ。
相談役故の悩み事は絶えない。
そんな彼のストレス発散方法はやはり野球なのだが。
しかし最近の相談はかなり重いものだった。