NOVEL2

□練習後、僕と君
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練習後、僕と君


誰も居なくなった部室。御幸はときどき何かを求めるように俺を抱き締める。何をするでもなく背中に回される腕。この腕で俺のボールを捕るかと思うとぞくぞくする。あのキャッチャーミットに白球が収まる音が、たまらない。





俺は御幸の腕の中でふと思った。

すぅと整った鼻。
やんわりと弧を描く口。
野球をやってる癖に何故か白い肌。
意外と長い睫毛。
節がなくて、長い指。
茶色くてじっと俺を見つめる瞳。



全部俺のモノなんだって。…そのかわり俺の全部は御幸のモノだ、たぶん。

(うわ、最後に弱気な言葉付けたら寂しくなったし!女々しい俺ってキモいな)



「栄純?」

「あ、………どうした?」


俺の肩口から顔を離して御幸が掠れた声で名を呼ぶ。その声で名前を呼ぶなんて卑怯だ………その、なんつーか……。格好良いんだよ、御幸が。なぜか情事後の彼を思い出してしまって顔が急激に赤くなる。血がすごい勢いで上に登っていくのだ。





「みみみ御幸!もうすぐ夕飯が!」


確か今日の定食はエビフライだったはず。どんぶり3杯の掟はまだ辛いけど、食堂のおばちゃんが作ってくれるご飯は格別に美味い。…というかこの空間から一刻も早く逃げ出したかった。御幸が嫌いなわけではない。むしろ好き、だけれど部員がいつ来るかわからないこの状況で、部室に居るのはとてつもない拷問に近かった。




「もうちょい…」






ほら、この声に弱くて何も言えなくなる。



「…わかったよ……」




汗と太陽のにおいが混じった御幸のそれ。
今だけはそのにおいに包まれて。








倉「は、入りにくい…」
増「沢村ちゃん…」


同室の沢村を迎えに来た2人の災難。





お題はDOGOD69様から借りました!

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