NOVEL2
□桜の季節に抱き締めて
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「で、そろそろ俺の質問に答えて?」
「あァ?」
「ここで何してんの?」
『ここ』の部分だけを強調されて、ようやく考えた。俺はここで何をしているのか。
まだ開花もしてないのに桜を眺めているはずもないし、単なる暇潰しなら帰ってしまえばいい。
質問の主はしばらく答えを待ったが、言葉を発しない土方の様子に眉をひそめた。
「俺がくると思ったから、なーんて自惚れてもいいのかな?」
「な゛っ!?」
そんなわけねェだろ。という言葉が喉まで来たが、ごくんと飲み込む。
俺がいなくなったら来てくれんじゃねェか。
きっとコイツもここに来るんじゃねェか。
そう脳の片隅で思ってたから、近づいてきたときに誰かなんて確認しなかったのだ。
なんとなく、わかっていたから。
どうせコイツも卒業式サボって、煙草をくわえながら、底の磨り減ったスニーカーで来ることを。
「反論がないってことは当たりって捉えちゃうよ?土方くん」
「…っ勝手にしろ」
じゃあ勝手にするわ。
と聞こえたのは土方が答えてから、1秒も経たない内であった。まさに即答。
ああ、卒業生たちの歌声が聴こえる。
もう巣立ってしまえば、合唱なんてする機会もないだろう。彼らが奏でる音色はとても雄大で、胸にくるものがある。
鼻をズビ、と鳴らした。
隣で並んできた銀髪は、横目でもわかるほどにギョッとしてから、疑問を投げかけてきた。
「ちょ、どーしたの」
「……」
柄にもなく切なくなったのだ。
来年の今日、あの歌を歌うのは、自分たちだから。
しかし弱い自分を見せたくない。
彼の白衣を引っ張り、震える瞼を肩に押し付けてやった。
何も言わず、ただやさしく抱き締めてくれる彼に、今だけは身を委ねた。
(来年もまたここで抱き締めて、なんて恥ずかしい科白は言いたくないけど、気持ちだけは伝わってほしいと願ってもいいですか、先生)
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2人とも誰?って感じになった…
そして当初の予定と大幅に違う内容に…
うう、でも銀八さんの名前を一回も使わないことにこだわりました。