NOVEL2
□素っ気ない君はネコに似ている
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夜道を歩くのは嫌いじゃない。
むしろ好きなほうだったりする。
街灯が彼しか歩いていないコンクリートの地面を照らした。
現在夜の7時。足立から急に誘われた遊園地からの帰りだった。
品川は手のひらで、先刻凛風に渡されたプレゼントを確認した。
それを受け取るまで今日が自分の誕生日だとすっかり忘れていたのだ。
そういえば他人に、ましてや友人に生まれた日を祝ってもらうのは何年ぶりだろう。
ふと過去の記憶に遡った。
小さいころは両親にも姉にも祝われ、一年に一度しか訪れないその特別な日に食べるあの白いショートケーキが大好きだった。
しかし小学校高学年になってから、あの甘ったるいものが苦手になって。その日は決まって練馬と遊んでいた。そのときから誕生日というものが恥ずかしくてむず痒いものになったのだ。
そして今。
現在進行形で生クリーム(というか甘いもの全般)が嫌いだし、年をとるこの日の存在をも消去しかけていた。
かれこれ約8年ほど祝ってもらったことがないのだ。
(…つーか四捨五入すりゃあ、ハタチかよ。うわ、冗談じゃねー。)
はぁ。
最近溜め息を吐くことが多くなった。それもこれも生徒会に入ってからだ。
生徒会なんてものは、それこそ(中身はともかく外見なら)花や和泉のような、いかにもマジメ!な人間が進んでやるようなもんだって思っていた。
けれど実際はそうでもなくて、見た目とか中身がヤンキーだとかどうでも良い。結局は“やる気”次第なんだって感じていて。
俺、変わったな。
でも、こんな自分も悪くない気がしていた。
♪〜♪〜、♪〜
「ん?」
ポケットの中でけたたましく鳴り響いたのは、正しく携帯電話。
受信を知らせるイルミネーションが、暗い闇になれていたからか眩しくて早めにそれを止ませた。
液晶に映ったのは先程まで遊園地で一緒にいたはずのひとり。
(和泉?)
白のバックに黒の文字。
確かにそこには『和泉岳』と名前が表示してあった。
受信ボックスを開けば、なにも違和感のない文字の羅列。
しかしそこに表示されていたのは和泉にしては意外なものだった。
『今からお前ん家行っていいか』
毎日学校で会うものだから(しかも同じクラスだ)電話はもちろんのことメールだってそんなにしないのに。
自然と口がつり上がる。
そして俺は胸の高鳴りを隠しきれないながらも、早く返信をしたいと打つ指を動かした。
家に帰る道のりで、こんなに足が軽くなるのはいつぶりだろうか。
できるだけ、早く。
俺は歩幅を大きくし、家へと向かった。
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