NOVEL1

□共に紫煙に酔おうではないか
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「タバコ、くれ」

「はぁ?」


それはそれはある日の放課後。

本当は生徒会室でタバコなんて不真面目なもの、呑んではいけないんだろうけど。

なぜか今日、たった今になって欲しくなってしまった。

目の前の眼鏡──決して足立や千葉ではない──は、さも嫌そうな顔をして振り返った。


「タバコ切らすなんて愛煙家としてどーなんだよ、品川」

「たまたまだ、たまたま。いいから寄越せ」


火をつけたばかりのそれに口をつける和泉は、それが人に頼む態度かと言わんばかりに俺を睨み付ける。

手を伸ばせば、案の定叩かれて。


「そんな欲しけりゃ自販機まで走れ。そして売り切れ表示に涙を飲めや」

「ばっか…っお前!吸ってんならこの気持ちわかんだろ!?」


和泉の口から吐き出される紫煙。
悠々と俺を見下している。
…そうだ。コイツはそういう奴だった。



「…ったく、わかったよ。」

「品川にしては聞き分けが良い──変なモン食ったか?」

「ばーか。くれねぇなら奪えばいい。」



不良(おれたち)は今の今までそういう生活を送ってきただろう?

身構える和泉。
元ゾッキーのコイツに勝とうなんて思っちゃいねぇ。(いや、たぶん勝てないと思うし)

強張った腕を取り、おもいっきり引く。



「う、ぉ…!?」


間抜けな声に思わず微笑。

そして、口に支えられていたタバコをとると、中途半端に開けられたそれに自分の口唇を押さえつけた。



「ん……っ!?」


あーあー。
目ェ見開いちゃって。
俺は和泉の口内に微かに残るタバコの苦さを全て吸いとるようにかき回す。


眼鏡が邪魔でかちゃと音をたてたが今はどうでもいい。
コイツがちゃんと俺を見ているかどうか。
それが一番。



つ、と俺と和泉を繋げる銀の糸。
艶かしい。



「ゴチソウサマ、和泉」

「〜〜〜〜っ!?」




ずり落ちている銀縁眼鏡。
滑稽すぎる。






「じゃあ、タバコ買ってくる」

「さっさと行け、馬鹿野郎!!」


からりとドアを開けて一歩踏み出す。
そこではて、と顎に手をあてた。



「和泉、」

「っなんだよ!?」


顔、赤い。
そうか和泉は今流行りのツンデレってやつなのか。そうなのか。

ってかそれにしても




「お前、ニコチン摂りすぎ。度数変えろ」

「…なんで俺が?」

「だってよ、キスするとき苦ぇだろーが」




それに早く死んだら困るしィ?

ニィと口角をつり上げて、わざとらしく笑ったあと生徒会室を出て自販機に向かった。


俺愛用のタバコを2箱購入するために──。







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