NOVEL1
□───Under cherry blossoms.
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Dolce Love Song!
(甘く柔らかに愛唄!)
───Under cherry blossoms.
1年前。
「アンタ、新入生?」
うわ、ジッと見てたら声かけられた…!
つーかヤバいって!!
正面から見たらめちゃくちゃタイプ。
直球ストライク!
何、この漫画的な展開!
「そうだけど」
「良かったぁ…俺、ぶっちゃけ迷っちゃっててよ。待ち合わせしてた幼なじみも先に行きやがるし…一緒に行こうぜ、体育館」
「あ…………うん」
そうか。
ここは中庭。
この学校は意外と広いためか、迷う新入生も多いらしくあちらこちらで挙動不審(失礼だけど)で真新しい制服をきた奴等が結構いる。
俺は入学式なんて面倒臭いし、どこかで時間を潰せればと思ってここに来たんだけど。
来て、よかったかもしれない。入学式も、たまには出てみても良いかななんて思えてしまって。
彼は携帯のサブディスプレイを見て、ゲ!と顔色を青くした。
「おい、行くぞ!」
「え?」
「ボケっとしてんな!あと5分で入学式始まっちまうだろ!走れよ」
急にグン、と腕を引かれ走り出した俺より一回りも小さいコイツ。必然的に俺も走る形となった。
「体育館どっちー?」
「そこ左!つか、お前、早すぎ!!」
「はは、体力ねーなぁアンタ。俺は陸上やってたからヘーキだぜ?」
「俺は中学3年間、何も部活やって、なかったんだよっ!あ、そこ真っ直ぐ」
「えーつまんねぇ中学時代過ごしたな、アンタ。」
「うっせー。……ほら着いた」
目の前には体育館。
おお、と黒髪は喜んで俺の手を離した。
…少し名残惜しい。
そしてニコとかわいらしく笑った。
体育館内の時計を見れば、あと2分ほどで始まってしまう。
「ありがとな。これで律に怒られなくてすみそう。」
「…律?」
「ほら、さっき言っただろ?俺の幼なじみ。この学校で結構有名になるはずだから、覚えてて損はないと思うけど」
「うん…お前は?」
「俺ー?俺は特に名をあげたいとか思ってないけど」
「違うよ。名前。お前の名前、教えて」
「……新倉響。」
「にーくらね。」
そこまで話して、司会の厳つい教師から席に着きなさいとマイクで言われ、俺達は顔を赤くしながら席に着こうとする。
生徒玄関でもうすでにクラス分けは見たから、すんなりとパイプイスに座った。
ちらりと横目で新倉の姿を確認すると、どうやら2つ前のクラス。
そして式が始まって漸く気付いた。
(あ、俺の名前言ってないや)
僕らの出会いは運命の始まりにすぎない。
歯車はくるくる回りだした。