NOVEL3

□終わらない恋になれ
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「堺さん堺さん!」


ぱたぱたとクラブ内を走る。
すれ違うとき、2人に軽く頭を下げれば、堺さんは一言を返してくれた。が、世良さんは何も言わずに、堺さんが着ているポロシャツの裾を夢中で引っ張っていた。

世良さんが堺さんの名前を呼びながら、後についてFWの心得は!?と聞き迫っている。
赤に近い茶色の髪の毛が、ぴょんぴょん跳ねていた。
本当にこの人は俺より年下なんだろうか、と時々疑問に思う。

そんな世良さんとは逆に、堺さんは五月蝿いと一喝した。
しかし世良さんに効き目がないのか、すりこみされた生まれたてのアヒルよろしく、付きまとっている。
(生まれたての云々は、偶然通りかかった有里さんがポツリと呟いた科白だ)

でも。


「しょうがねーな。世良、あとでメシ食い行くぞ」

「うわっ!まじですか!あざーすっ!」


ああもう。早くメシでも何でもいいから、どっか行ってくれ…。

目の前で繰り広げられている会話にイラつく。
堺さんが完全に世良さんを疎ましく思っていないのも、俺じゃない誰かに笑ってる世良さんも。

俺と世良さんの間にある溝は、浅いようで深い。と思う。

燻っている気持ちを言葉にすらできないのに、こんなに嫉妬深いなんて吐き気がする。

いっそのこと、この2人がくっついてしまえば、醜い気持ちが息絶えるじゃないか。なんて。

誰かの隣にいる世良さんでさえも想像できないっていうのに、


「ねぇザッキー!」


俺を呼ぶ王子に返事をして、世良さんを視界から追い出すように、ロッカールームに足を踏み入れた。



何もかもアンタの所為だ、世良さん。



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