Witch
□秘めごととタブー
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駆け寄り、隣に膝をついたひとを一瞥する。
「ふくちょ、さん…ごほっ」
「喋んな。水飲むか?」
「は、い」
彼は立ち上がり、さきほど私が洗った湯呑みを水で満たし、咥えていた煙草を水流で消して、再び私の目線に合わせて膝を折る。
差し出されたものを受け取って、マスクをずらし、口に運ぶ。水が、熱をもった喉を冷やす。
「はあ…あ、ありがとう、ございます」
「良くなったか」
「おかげさまで…」
呼吸を整えてから礼を言うと、整った顔がわずかに険しさを浮かべていた。
未だ彼の手は私の背をさすっている。落ち着くまで、ずっとこうしてくれていた。
「すみません」
「気にするな。それより、今日はもう休め」
「いえ、大丈夫です。よくあることですから」
「そんなこと言ったって、おまえ…」
「大丈夫ですから」