Reason

□参
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荒い呼吸のせいで、吐き出したばかりの己の吐息をただちに吸い込み、体内が熱く滾る。顎から汗が滴った。


朝から晩まで夢中で不知火と時を過ごす日々。
筋肉に乳酸と共に力が蓄積されていく。人を殺す力が。

彼に求められることはなんでもやり遂げたかった。
褒められることなんてなくたって、強くなって少しでも長く晋様の側に置いてもらいたい。
それさえ贅沢な望みだということは、よくわかっていた。だけど唯一の望みだった。


「…!」


急に手のひらに痛みが走り、力が緩んで、刀がぐらりと傾く。
一瞬の隙と血の匂いを嗅ぎ付けたのか、舞い落ちる花びらのように重力を利用し、薄い刃は僕の脚を斬りつけた。
血を舐めた不知火は、満足そうにそのまま地面に倒れる。

手も脚も痛むなか、少々迷ってからまず脚を見た。
右の太股、内側がぱっくり開いて、赤い肉からつらつらと血が肌を伝っている。
気が滅入るついでに両手のひらを広げてみたら、肉刺が潰れて濡れていた。


「うーん…」


まるで他人事のように、手と脚の血を見比べる。とにかく、まずは手当てだ。


「…雅」



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