Reason

□八
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良いか。
あの場所におまえが立てば、必ずやつはおまえに目をやるはずだ。逃がすなよ。うまくやれ。


着物を買ったあとも、万斉さんにまかせっきりで、髪を結い化粧をした。
家に帰って帯を締めたら、すっと背筋がのびた。
すっかり男娼に化けた僕に、晋様は噛み締めるように、最初の段取りを言って聞かせた。

本当に僕に目をかけるだろうかと不安はあったが、万斉の見立てだ。間違いはねえ。と言い切る彼の言葉を信じることにした。


夜闇にネオンが溶けた不健康な繁華街の一角で、行き交う人々に注意を払いながら過ごす。
聞くところによると、今日はこの通りにある店で別の組との会談があるから、必ずここを通るという。
周囲から浮かず、かといってそこそこに目立つ場所で、そのときを待つ。


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