Reason
□参
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小春日和の陽気の中、近くで小鳥がさえずっている。
ふわりと爽やかな風が頬を撫でて、春の香りが鼻をくすぐった。
そんな麗らかな昼下がり、僕は不知火を握って、ひたすら空気を切断し続ける。
澄みきった薄青い空は、どこか寂しげに風を運んだ。
長屋を出ると、真ん中にどぶを通して、狭い通路がある。この通りの長屋に住む者は、陰気な人間が多いのか、ほとんど外出しない。
ときどき出くわしても、家の前で所持を禁じられた刀の稽古をつけている僕に目もくれない。足音もなく去っていく。
皆が他人に関わらぬよう生きているのだ。
ときどき不気味であったが、晋様がこの家に選んだ理由もきっとこれだと思った。
天人に襲撃されたとき、敵は彼をお尋ね者だと言った。
余計なことを言わぬ者が肩を寄せ合うここは、身を隠すには絶好の条件だ。
誰にも気兼ねのいらないこの場所で、毎日毎日、飽きもせず刀を振るった。
晋様はときどき訪れ、ときどき稽古をつけてくれた。
彼の稽古は厳しい。
褒められることなんてまずなかったけれど、徐々に技術が身についていく手ごたえはしっかりあった。
完全に自己流だった剣の使い方は、癖を直すのにかなり苦戦した。
だけどそれを乗り越えると、技術を磨くのは楽しかった。