Witch
□良薬口に甘し
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「あれ、桔梗。風邪か?」
今日初めて会った局長さんは、開口一番そう言った。
原因は、口許を覆うマスク。
昨晩から咳が少し気にかかるようになり、医務室にてもらってきたもの。
とはいえそこまで気になるほどじゃないから、炊事をするときのみつけることとしている。
「いえ、もともと肺が弱くて。大したことはないんですけどね」
出来上がった食事を配膳しながら、彼を見上げる。眉を顰めた切なげな顔が見えた。
「え、そうなの。あんまり無理すんなよ」
「はい。ありがとうございます」
軽く会釈をして、その場を離れる。
この身体は、肺がというより基本的に強くない。いまは肺に重点が置かれているだけで、その前は胃が痛かった。
こういう苦痛は今に始まったことじゃない。慣れている。