Witch

□秘めごととタブー
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「げほ、げほっ。ごほっ」


その日は、特別体調が悪かった。

吐き気を抑え込みながらなんとか朝食準備を作り終え、後片付けは一人でまかった。
掃除や洗濯をするため、ほかの女中は厨房から出払い、ひとり大量の皿と対峙する。
ここには誰もいないし、水の音もする。出るぶんだけ咳き込んだ。
顔半分を覆うマスクにこもった熱で、余計に気をやられてしまいそうだ。


「ごほっ…う、はぁっ」


だめだ。ずるずるとその場にしゃがみ、胸を抑える。腫れた気道を行き来する空気が、北風のような耳障りな音で鳴く。

息苦しくて、意識がぼやける。足の支えがきかなくなってきて、ぺたんと座り込む。


「おい、大丈夫か!?」



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