主食

□狭間を手元に引き寄せた
1ページ/1ページ

一度目の目覚め
意識がぼんやりしていてこのまま眼をつむればまたすんなりと眠ることができるだろう。
目の前がまっくらでとてもあたたかい。

二度目の目覚めちょっと意識がはっきりしている。
いい匂いがすることに気がついた。あと、抱きしめられていることにも。
肩のあたりに重みを感じる。背中と頭の上があたたかい。両足になにか絡まっていて動かないし、おでこにはなまぬるいものがあたる。
あれれ?おかしいよ、私が寝た時には一人だったのに。
頭だけ動かして顔を確認しようとする、あごと唇しかみえない。でもなんとなくわかった。
最初からなんとなくわかってた。
晋ちゃんだ。
私はあごに軽く口付け、また眠りにつこうと眼を閉じた。
そしたら今度は私が口付けを受けた。唇に。
あらら?
「人の寝込みを襲うたー良い度胸じゃねーか」
私を抱きしめていた腕がするりと離れる。眼を開けば押し倒された体勢になっていた。
晋ちゃんは私の上でぴったりと胸やお腹をくっつけて足を絡めている。
「ちがうよ、魔が差したんだもん」
「わけわかんねーよ」
また口付けられる。今度は舌べらがにゅるっと入ってきた深い口付け。
晋ちゃんの舌は私の舌にねっとりと絡まる。
「むっ…」
舌は絡まるだけではなく、口の中でもごもご動く。口の端からはどちらのものかは分からなくなったよだれがたらり、と零れ落ちた。
晋ちゃんは舌で歯列をなぞってから私の舌を甘噛みすると満足したのか口を離した。
離れた晋ちゃんの舌べらと私の下唇の間には銀の糸が伝う。
ぷつんと切れると私の唇にぽたんと落ちた。そこをぺろりと軽く舐められる。
窓から月の光が差し込んで、晋ちゃんの顔がぼんやりと覗えた。
(あ…)
とろんとしてとろけそうな晋ちゃんの瞳と目が合うと、晋ちゃんは重たそうに頭を枕へと落とす。
布団と晋ちゃんに挟まれた私は真横にある晋ちゃんの頭(正確には、髪)から漂う香りにどきどきして優しい気持ちで眠りについた。

三度目はきっとおはようって言い合おう、それからまたキスをしよう。(貴方は口に出さなくたって気づいてくれるから好き)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ