Short story

□switch
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「ほォ。そうやって何もしねェで帰ってきた訳だな、山崎ィ」
 そう言うと真選組の鬼の副長・土方十四郎はいつも通り市中見回りの休憩を取るべく定食屋に、真選組の隊士であり監察である山崎退と昼飯を食べている。もちろん土方の昼食は結局マヨネーズまみれになる。
 何日か前に土方が山崎に下した命令。「坂田銀時を斬れ」というもの。山崎は土方のいう通り密偵で、傷ついた銀時が恒道館道場で看病されているという情報の下に道場に侵入したことがある。しかしその時は銀時に関して何も怪しい情報は得れなかった。その上で山崎は報告書を書いた。けれど…、
「あんな報告書が認められると思ってんのか?」
「ひっ!」
 土方の瞳孔が開き気味になったかと思えば、山崎の頬すれすれのところに土方の愛刀を突き付けられる。人より少し長めな山崎の髪が数本切れ、はらはらと畳に落ちる。
「体が動けねェのに野郎が攘夷活動なんて出来る訳ねェだろうが!」
「ごめんなさい!すんません!」
「それくらい考えろ」
 土方は軽く山崎を恐がらせると刀を下ろし、土方スペシャルを貪るように平らげる。それを見た山崎は恐怖より気持ち悪さを覚える。割りに見慣れてきたが、喉の奥から胃酸が出てきそうになるのは毎回同じことだ。
「行ってこい」
「えっ?」
 勢いよく食べた丼を力強く机の上に置き、隊士服の内ポケットからタバコを取り出し一つ吹かす。
「今度は万事屋に行け。流石に奴ももう元気だろ。そんで敵とわかり次第今度こそ、斬れ」

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