Short story

□お熱いのはお好き?
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 仙望郷に永らく腰を据えていた霊(スタンド)達が空へかえっていってから数時間が経った。
 銀時の脱け殻に入ったザビエルを引っ張りだすことになんとか成功し、後はゆっくり眠るだけ。
 の、はずだった。
「なァ、新八ィ」
 結局巨大な魔を封じたような扉のある和室で寝ることになった銀時は、今まさに敷いた布団で寝ようとしていた新八に、気持ち悪いくらい甘ったるく声を掛ける。
「な、なんですか?」
 銀時のその声のトーンに、またよからぬことを考えているな、と薄々気付いた新八は、警戒しつつもとりあえず布団の中に足を忍ばせる。もう少し布団を離しておくべきだった、と今更ながら後悔する。
「温泉、もっかい入んねェか?」
 思いもよらない言葉に新八は外した眼鏡を掛け直した。
「いやァ、温泉入った時は霊(スタンド)気にしすぎてあんまり堪能出来なかっただろ?だから…よ」
 掌に顎を乗せリラックスモードで銀時は布団の中に横たわっている。相変わらず胸板をちらつかせ、仙望郷特製浴衣を着こなしていた。部屋にある行灯が、仄暗い光でゆらゆらと銀時の体を照らしている。その光が銀時の体に影を落とし、蛍光灯では出せない無駄な色香を漂わせている。
 旅行、薄暗い部屋、夜、二人きり。このキーワードがパズルのピースのようにぴったりはまった時、人は正確な判断が出来なくなることを、新八はこの日身を持って知ることになる。その相手が銀時なら仕様がないことなのかもしれないが。
「そうですね…ザビエル追い出すのに汗かいちゃったし、夜の露天風呂もいいかもしれませんよね?」
「うし、そうと決まればすぐ行こうぜ」
 新八を促し、タオルやら必要なグッズを持ち、特に銀時は意気揚々と昼間入った露天風呂へと向かった。新八はそんな銀時に背中を押され急かされながら、銀時が薄ら笑っていることを知らずにいた。

 原作公認でケダモノ呼ばわりされた俺の本気をたっぷり味わえよ、新八…!

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