Short story

□あなたにハッピーバースデイ
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 夏が来た。体がべとつく感じや風呂上がりのような生暖かい空気に、新八は袴の合わせ目を緩める。
 夏が来てる。自然に吹き出てくる汗を手の甲で押さえた。蝉が羽ばたいた時の羽の擦れる乾いた音がした。
「じゃあ僕、銀さん達ちょっと見送りしてきます」
 新八はお妙にそう言うと、志村家の大きな入り口でバイクと定春がいるのを見つけ、その横で神楽を背負っている銀時の元へ駆けた。少しだけ涼しい風が新八の頬を撫でた。
 今日は新八の誕生日だった。
 志村家の鉄則。家族の誕生日は必ず祝うこと。それは亡き父母の誕生日も含めてのことだ。とは言っても新八お妙に比べれば盛大さには欠けるのだが、とにかく志村家の誕生日は志村家ですることが暗黙の了解になっていた。
 それ故、今日は銀時も神楽も定春も、志村家に招待されるという形で誕生日会が開かれた。途中で、お妙が呼んだ九兵衛や、相変わらずのストーキング行為で出現した近藤、近藤を捜しにきた土方や沖田、近藤のストーカー度合いに負けず劣らずのあやめまで現れてうるさくも賑わいの絶えない誕生日会になった。
「お待たせしました」
「おう。じゃあ行くか」
 予期せぬ来訪者、沖田が現れたことで神楽は沖田とひたすらにバトルを繰り返し、そのことで体力を消耗したのか銀時お手製の10倍激甘ケーキを食べ終わった頃には自然と畳の上でよだれを垂らして寝ていたのだ。神楽は一度深い眠りにまで達すると、そんじょそこらの手段では起きないという、銀時と新八にはいろいろと都合のいい性質をもっていたので、仕方なく銀時がおんぶをして万事屋に帰る羽目になってしまった。そうなるとバイクを押すことが出来ないので、新八も見送りついでに帰る手伝いをしてあげているのだ。

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