Short story

□新八にメイド服を与えてみました。
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「じゃあ問題行くぞ!」
「はい!」
 新八があえてこの不条理な条件でのゲームにくいついたのには、それなりに答えられる自信があったからだ。確実に銀時より常識人だと自分でも思っているし、自分のまわりにいる人達の素性だってだいたい知っている。負けるはずがない、という気持ちと、正直家事に疲れたという気持ち。どちらといえば、後者の気持ちの方が大きかったのだから、疲れていたと言っても過言ではない。
「うっし!問題!銀魂第十一巻の20ページ目、最初の一コマの台詞は!?」
「………………えっ?」
「だからァ、銀魂第…」
「聞こえてるわァァァ!なんだそのジャンフェスのANIPLEXブースでしか獲得出来ないCDの中身と同じような問題わァァァ!!!」
「じゃあ答えは?」
 銀時の顔が悪辣として唇が弧を描く。それはもう悪代官が越後屋から小判をわんさか貰って嬉々としているように、そんな笑顔で銀時は新八を見つめる。新八はもちろん答えられず撃沈した訳で………。
「やっぱりこうなるのか…」
「おぉ!ハラショー」
 銀時が最初に要求してきたのは男のロマンであるメイド服を新八が着ること。
 頭にフリルの付いたカチューシャ、首には襟のようなチョーカー。胸元が丸く開いた黒いワンピースは足の付け根ほどの丈で出来ていて、半袖の部分だけ白シャツ調でワンピースと繋がっている。腰から巻くエプロンももちろん端にはフリルが付いていて後ろで大きく蝶々結びを翻している。スカートの中はレース生地で出来たパニエというアンダースカートで、スカートをより一層広げさせる。靴下は膝より上まで伸びる黒ニーハイソックスで、新八の細い足を包む。そして極め付けは女性用下着…。
「最低!最悪!性欲魔人!!!」
 泣きべそをかきながら、黒と白のコントラストに覆われた新八はスカートの裾をぎゅっと握る。
「なんとでも言え。俺達もそろそろ次の段階にいかないとなァって思ってたんだよ」
「鼻血流すのマジでやめて下さい、銀さん」
 銀時はうんうんと妙に納得したように頷きながら新八に近付き、鼻血を垂らしながら新八の肩を自分に寄せる。
 きっとこれから変なことされるに決まってるんだ、と思った新八は耐えるようにきゅっと目を瞑った。
「それじゃあまァ手始めに俺の切った爪と床に付いた鼻血の処理よろしく」
 とん、と新八は肩を叩かれて目を丸める。意外な行動だった。銀時のことをもっと低俗というか、年中発情期男だと思っていたからだ。

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