Short story

□恋の薬は魔法の薬☆
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 想像しただけで自分の股間が元気になってしまうのだから、まだまだ自分も若いな、と銀時は苦笑してしまう。
 しかし怪しいにもほどがあるな、と銀時は眉を潜めてその箱とにらめっこをした。パチンコ屋の戦利品に入っているようなものだ。怪しい以外の何ものでもない。
 とりあえず今握っている分を実験に使うべく、同じ物が紙袋の中に入っていないかもう一度漁ってみることにした。今度はよく中身を見ながら。
「………………お!」
 案の定、他にも二つ同じ物が入っていた。銀時はこの一つを何を対象にして実験をすればよいかを考えながらだんだん暗くなっていくかぶき町を歩いた。
「にゃ〜お」
 突然、路地裏から猫の鳴き声が聞こえた。銀時は足を止め、その声の主を探す。
「にゃ〜」
 その猫は真っ黒な毛に碧眼を持ち、路地裏を歩くには美人すぎていた。首輪は付いていないようだったが、育ちがよさそうに見える。
 銀時は黒猫に近付き、しゃがんでは手を差し伸べてみた。普通の猫ならば、この行為だけで素早く逃げてしまいそうなものだったが、猫は逃げなかった。が、素っ気なかった。人間を恐れないようだった。
 触ろうものならツンとした態度で銀時をひたすら見つめている。恐れてはいないようだが、警戒心を解いた訳ではないようだ。
 そんなあまのじゃくな猫を見て銀時は、頭の中で電球を点けたかのように何かを閃き、紙袋の中身をまたごそごそと漁り始めた。
 銀時の考えにいい感じの物が見付かったので、その真空状態な中身をプラスチックの袋から取り出す。由来は旧仙台藩主伊達家の家紋からくる、掌サイズの笹型かまぼこだ。これに先程の「惚れ薬」なるものをつけて食べさせて、反応を見ようという作戦である。
 我ながら見事と自画自賛しながら、銀時は惚れ薬の箱も荒々しく開けた。4、5cm程の茶色い瓶で、蓋を回してみるとご丁寧にその蓋にスポイトが付いていた。
 初めて使う物だし、相手は猫だし、と銀時は妙に気を遣い、透明な液体の惚れ薬を笹かまに2滴程垂らして、闇のような漆黒の猫の前でそれを左右に揺らす。腹が減っているのか猫は鋭い爪でたやすくかまぼこを引っ張って、自分の目の前の地面に落とした。勢いよく飛び掛かり無心で口に頬張っていく。
 その時だった。がっついていた笹かまは無視して、猫は突然銀時の手の甲に爪を立て、それはそれはひどく腰を前後に動かし始めた。

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