短編
□おかん!
1ページ/3ページ
「ああ…平和だな…」
今日は天気がいいから畑の方でもいじってみるか、なんて自室で思っていると、今にもドドドと地響きがなりそうな音が廊下からしてくる。
音の主はだいたい言うことを聞かない人物だと思う。
否、政宗様だ。
礼儀と常識が一般人から少しズレてるのは、きっと俺がしっかりしていなかったからだと痛感している。
申し訳ございません、輝宗様。
私は…あの方に普通の常識を与えられなかったようです。
小十郎!という掛け声と共にスパンと勢い良く襖が放たれる。
「如何なされましたか、政宗様」
「Partyだ、小十郎!」
「は?」
「ぱーてぃー」ということは、政宗様にとっては楽しいかもしれないが、俺の胃が痛むこと間違い無しだ。
「政宗様、もう一度仰って下さい」
「Oh…小十郎も遂に耳が遠くなったか…。だが、safeだ、小十郎!耳が遠くなった年寄りは長生きするんだぜ?」
難聴になったとしたら、「せーふ」じゃない気がする。
政宗様のお気遣いは有り難いが…俺はまだ難聴にはなってない。
「…俺はまだ若いですよ!とにかく、先程は"ぱーてぃー"と仰ったのですか?」
「All right!なんだ、聞こえてたんじゃねぇか。しかし、発音はbadだな」
異国語を勉強してるからって、調子に乗るのは止めて下さい。
異国の者の発音など、この国の者にとって、難しいものなのですから。
「発音など関係ありません!今はそんなことより、貴方は何をしたいんですか!?」
「そんなことぉ?発音をナメんなよ、小十郎!!もう知らねぇ!暇潰しに庭に散歩にでも行って来る!!」
「ま、政宗様!」
やはり、竜の扱いには困るものだ。
それに何故、"庭"を散歩するはずなのに"馬"に乗って、"城"を出て行ってるのだろうか。
困ったものだ、と呟いてみるけれど、まだ行き先が分かるからいいかと笑ってみる。
…あぁ、今日は天気がいいから、馬に乗って"散歩"にでも行くとするか。
"竜が居るところ"へ。