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□死神と混濁する白
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十一月二十三日午前零時零分、赤屍宅。
「ハッピーバースデー、赤屍」
「……はぁ、それだけを言いに来たんですか」
ベッドの中で、鏡が笑顔でそう言うのを聞いて赤屍は呆れたように言った。
「まぁ、それだけの為ではないんだけどね」
赤屍の白い肌に点々と付いている赤い跡を人差し指で鏡はなぞった。
「……自分が楽しんでどうするんですか」
「君も楽しめて一石二鳥だろう?」
その言葉に、赤屍は心底嫌そうな顔をした。
「楽しんでなんか――」
「嘘吐きだね。それとも素直じゃないだけかな?」
「……」
もう何を言っても無駄だと、赤屍が黙る。
すると、鏡はひょいとベッドから抜け出し、椅子に引っ掛けた上着から財布を取り出した。
「さ、何が欲しい?何でも買ってあげるよ」
「突然そう言われましても……」
そう言って困った顔をする赤屍の耳に鏡が囁く。
「物じゃなくても良いんだよ」
「……」
明らかに卑猥な響きの籠もった鏡の言葉に、赤屍は溜め息を吐く。
が、直後に赤屍の頭に良い案が思い浮かんだ。
「何でも宜しいんですね?」
「あぁ、何でも良いよ」
「そうですか。じゃあ……」
そう言って赤屍もベッドから抜け出し、鏡の前に立った。
「私と本気で戦って下さい」
「……え?」
鏡の顔から初めて笑顔が消える。
「何でも良いと言ったではないですか」
「あ、あぁ……んー、良いんじゃないかな」
今にもメスを出しそうな赤屍に迫られた鏡もまた、何事かを思い付いた笑みを浮かべる。
「じゃあ遠慮な、く……!?」
赤屍が言い終わる前に、鏡が一瞬にして背後に回り込む。
赤屍も反射でメスを投げるが、それは鏡像で。
鏡像だと気付いた瞬間には赤屍は床に押し倒されていた。
「本当に、本気でしたね……」
「卑怯な手だと言いたいのかな?」
「いえ、油断していた私に非がありますので……」
そこまで言って、赤屍は衣服の中を弄る手の存在に気付く。
「鏡君……何してるんですか?」
「何って、これからが本番じゃないか。ねぇ?」
鏡の言葉に、赤屍は顔を引きつらせる。
「一つお聞きしますが……何の本番なんですか?」
赤屍の動揺を知ってか知らずか(いや、絶対に知っている)、鏡は満面の笑みで答える。
「決まってるじゃないか……ベッドの上での格・闘・技」
「……か、鏡君……」
予想通りの返答に、赤屍から血の気が引く。
そんな赤屍にはお構いなしに、鏡は唇をペロリと舐めて言った。
「さぁ……本気でいくよ」
「――!!?」
声にならない悲鳴が夜の闇に響いた。












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