OTHER

□貴方のそれには弱いの
1ページ/1ページ

カチャカチャとベルトを外す音が聞こえる。
それに合わせて俺の鼓動も速くなっていった。
――あぁどうしよう、遂にこの時が来た。
身体と表情が強張った俺に、慎吾さんが笑い掛けてくれる。
安心させてくれようとしているのは分かる。
俺だって慎吾さんの事、大好きだ。
だけどやっぱり、今から為されるだろう行為は怖い。
恥ずかしながら初めてで、しかも男同士なんだから尚更だ。
でも今更断るなんて出来ない。
俺は今まで逃げてばっかだったけど、慎吾さんは待ってくれた。
無理強いなんてしなかった。
だから俺は今日こそは頑張ろうと思って、慎吾さんの誘いに首を縦に振ったのだが――。
――うわああぁ、やっぱ無理だよ!
自分の目が泳いでるのが分かる。
そんな俺の頭をわしわしと慎吾さんが撫でた。
「大丈夫だから」
「……はい……」
とりあえず頷いたが、心臓は早鐘の様に鳴ったまま。
全速力で走った後だって、こんな風になんないぞ!
そんな事を思ってたら慎吾さんがゆっくりと俺に覆い被さってきて、俺はテンパりの絶頂に達した。
「待って下さい!!」



――今何つった?
目の前の愛しいこの子は。
「え……?」
ひくりと俺が顔を強ばらせると、杏型の迅の瞳にみるみる涙が溜まる。
「ご……ごめんなさ……し……ごさ、」
「じ、迅……」
慌てて俺は迅の涙を拭う。
「俺やるって決めたのに……」
「いや、怖いんならまた今度にしよう」
迅の泣き顔を見て俺の口が勝手にその言葉を紡ぐ。
――いやいや、何言ってんだ俺。
今まで何度も先延ばしにされて、今日やっと許可を貰えたんじゃないか。
此処で引き下がったら男じゃねぇだろ!
内心そう思いながらもにこにこと笑い掛ける。
そんな俺に安心したのか、ぺたりと迅が抱き付いてきた。
――そりゃないだろ!!
思わず叫びそうになる。
ワイシャツしか身に付けていない好きな子に抱き付かれて大丈夫な男がいたら会ってみたいものだ。
迅を抱き返した腕を片方の腕で抓りまくりながら何とか理性を保とうとする俺。
何か変な汗が背中に流れるのを感じながらひたすら迅の頭を撫でた。
無意識に罪を重ねてしまう子って居るんだな。
俺の腕の中で微睡み始めた迅を見て、そう思わずにはいられなかった。












[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ