OTHER LONG

□A punctual teacher
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プロローグ



彼は穴に落ちた。
深く、深く。
しかし止める事は出来なかった。
もがけばもがく程落ちるスピードが速くなっていく事を彼は知っていた。

彼は決心した。
こうなったら落ちる所まで落ちてやろうと。
ゆっくり目を閉じて吸い込まれるように落ちていく。

穴に底は無いのかもしれない。
彼はそう思った。
何時まで経っても自分の体は地に着かない。

ザブン、と音を立てて彼の体は水の中。
彼は泳ぎは得意であったが、其処では無力であった。
浮いて沈んで沈んで浮いて
彼は自分が溺れていると気付いた。

その水は時に冷たく温かく
浮いた時は途轍もない快感に襲われて
沈んだ時は心も沈む。

彼は知った。
自分が落ちた穴の名を。
自分が溺れた池の名を。

彼は知った。
もう後戻りは出来ない事を。

彼は恋をした。



→夜さりの公園T
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