Novel
□address
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久しぶりに聞くざわめきに無意識に足が止まった
久しぶりというより懐かしい――と言った方がしっくりくるかもしれない。
『address』
「もうあれから5年か…早いなぁ」
僕が泥門を卒業して5年が経っていた。
まだついこの間のように思える。
仕事の取引先に向かう途中で高校生のスポーツ部の掛け声に昔を懐かしむように目を向けて呟いた。
「あの頃が今までの中で1番楽しかったな」
初めての部活、初めての友達、初めての仲間、初めての……恋人。
みんなでがむしゃらに頑張ってクリスマスボウル目指して、ただ前を向いて走ってた。
毎日がドタバタで目まぐるしくてハラハラする事も多かったけどすごく楽しかった。
「蛭魔さんといる時は冷や汗かくことも多かったなぁ」
グラウンドで先輩に勝を入れられて、半泣きになりながら必死に返事をしている子を見て苦笑してしまった。
昔の自分と重なって何とも言えない気持ちになってしまう。
「今、何してるのかな…蛭魔さん」
もう会えることはないかもしれない相手を想いグラウンドのフェンスに指を絡めて目を閉じる。
「もうすぐ3年……かぁ」
蛭魔さんと連絡がとれなくなってからそれくらいの月日が流れていた。
僕が泥門を卒業したその日に僕たちは別れた――