■L.Novel


□星に選ばれし者達
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魔晄炉爆破






 眠らない魔晄都市ミッドガル――
 円形に並んだ8基の魔晄炉とそのプレートを支えるきかい等から成り立ち、そのプレートの上に魔晄都市ミッドガルは聳え立っている。魔晄炉から得た電力は、都市を潤い今では世界一の大都市になった。その大都市の運営を握っているのは、いまや世界を軍事とエネルギー供給で、この世界を掌握してしまった企業「神羅」。
 この魔晄都市には、二つの世界がある。
 上のプレートに住む人間。
 そして、全く陽のあたらないプレートの下に住む人間。
 下層は所謂スラム街で、ここも上のプレート同様1地番街から8番街へと分かれている。その上と下を繋ぐのが、魔晄列車だ。魔晄列車は、下層の七番街を始発駅としそこから螺旋トンネルを抜け各駅に枝分かれていく。
 今、一台の列車が螺旋トンネルをスピードを出し走り抜けていく。
 この列車の最終終着駅は、一番街軍事施設街だ。そのため、この列車に乗るのは大半が神羅関係者の筈なのだが、車両にはそぐわない者達が数人その車両を独り占めにしていた。
 バレットは、気に入らなかった。いくら、あれの幼馴染だからといって…作戦に加えるのは。いくら、人手が足りないとはいえ約束した報酬が馬鹿にならない。
 バレットは、無意識に舌打ちする。揺れる魔晄列車のシートに座りながら扉付近に立ち腕を組み、瞼を閉じている青年を見る。他のメンバーは、それぞれ逆の方で、それぞれの事をやっていて一人青年が浮いた存在となっている。
 スピードを出して走り抜けている列車の車窓は、殆ど暗闇で何も見えない。まだ列車は、プレートの下を通りぬけている最中だ。途中、IDチェックのセンサーが作動したが、何事も無く通り抜けた。
 ここまで来る間も、ろくに会話を交わしていない。紹介されて、頼まれただけだ。作戦の詳細の説明をジェシーにまかせ作戦決行にいたる。内心元ソルジャーだろうが、バレットから見れば若造にしか見えない。
 愛想も無ければ、表情というものをどこかすっぱり置き忘れてきてしまっているような青年をどう扱い接していいのか判らないし、それにあの忌々しい神羅の手先だ。神羅が送り込んだ、スパイとも限らない。
 何か気に入らない。
 ムカ百式0形式600は、七番街スラム駅から発車し今そのスピードを上げ螺旋トンネルを上のプレートに向け走りぬけている。鉄とレールが擦れる高い音と、列車の揺れる音が重なる。
 一向に変わらない車窓の向こうの風景が流れさっていく。
 青年は、別にこの男が自分の事をいぶかしんで見ているのは判っていたし、だからと言って気に入って貰おう何て思っていない。昔から、そうだった。だから、あの幼馴染の少女に偶然出会っても、懐かしいとかそういう感情はわかなかった。その幼馴染が、テロリストに参加していて、魔晄炉を爆破させる作戦を聞いたときも何の感情もわかなかった。
 名前を言いたくないのか、覚えていないのかパレットはこの青年の事を「新入り」と呼んだ。別に自分も名前などどうでもいいし、覚えて貰おう何て考えていないから、そう呼ばれてもさほど気にしていなかった。
 「新入り」
 青年は、ゆっくりと瞼を開きバレットを視線だけで見る。その態度が気に入らなかったのか、このテロリストのリーダーは、口を歪ませ青年を見る。
 「俺になんか、用か?」
 「リーダーは、俺だぞ、わかっているのか?」
 「…………」
 青年は、何を突然いうのかと思えば“そんな事”かだ。
 余りにも、自己顕示の強さに青年は盛大にため息を吐いて肩をすくめて見せる。その態度が余計バレットには、いらつく原因だった。
 「気に入らなければ、初めから断ればいい。俺は、報酬が貰えるから参加しているにすぎない」
 「な!なんだと、てめえ!幼馴染の紹介だというから…」
 そこへ二人のメンバーが、今にも殴りかかりそうなリーダーを止めに入るが腕力にかなうわけも無くいとも簡単に引き剥がされる。バレットは、拳を握り今にも殴りかかろうとするが怒りをこらえて後ろを向き向こうに行ってしまう。
 メンバーの方から、安堵の息が洩れるのが聞こえる。青年は、また何事も無かったかのように、腕を組み瞼を閉じる。
 列車はまもなく、終着駅に着く。
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