the truth

□第1夜
2ページ/3ページ










「ありがとうございましたー!」


店員の営業スマイルを背に車を発進させる。
ギリギリ間に合うかと広い道路を走っていると段々見えてきたライト邸。
普段よりも何倍も派手にライトアップされ、屋敷は色気やセンスの欠片もなく照らされている。


『相変わらずの悪趣味だな』


悪態を吐きながらスピードを下げ入り口の前につける。
すると近くに立っていた使用人の男がルベリアの車に近付いた。


「お待ちしておりました、マルベルト様。ライト様も首を長くしておいでです。さ、中へ」


あァと返事をして車を降りると使用人にキーを渡し中へと歩みを進めた。
扉を潜ると派手な衣装に身を包んだ婦人やスーツを着こなす人々が溢れかえっている。

人にぶつからないように進んでいるとジーク!!と自分を呼ぶ声が聞こえたためそちらに視線を向けた。


「待ってたぞ、久しぶりだな」


ハハハと笑うこの男性が依頼主のライト家当主、ダン=ライト。


『お久しぶりですライトさん。お元気そうで何よりです」


社交辞令として片足を少し引き片手をお腹辺りに持ってくると、腰を曲げ一礼。
そんな堅苦しくするなと肩をバンバンと叩かれ苦笑いをする。


『そう言えば、今日は何をご披露なさるのですか?』


依頼は展示物の死守だったのだが、その展示物が見当たらない。
ライトは嬉しそうに笑うとまぁ楽しみにしておけと壇上に上がって行った。


『(わかんなきゃ動けないだろ…)』


溜め息を付きながら近くのテーブルからワイングラスを取り、怪しい人物がいないか然り気無く辺りを見る。
すると、どこか周りと違う雰囲気を醸し出す人物が男女各1名ずつ。
しかも、ルベリアを見ている。
ルベリアは口元に弧を浮かべると壇上の方に向き直り、ワイングラスに口をつけた。


『(念能力者か…厄介だ。)』


面倒くさいとライトの話をBGMに、どうするか思考を巡らせる。
一応ブラックリストや最近名を上げてきている者等毎日チェックしているが、先程の二人は見たことがない。
雑魚か情報も掴めないような相当なやり手かのどちらかだろうが、みた感じ恐らく後者だろう。

一体何者かと考えに更けているとライトの声が響いたのでそちらに視線を向ける。


「長らくお待たせ致しました。ではいよいよ先日手に入れた極上の品をお見せ致しましょう!」


その言葉と共に使用人が布で隠された何かが乗った台を押してくる。
それにスポットライトが当てられるとライトはニヤッと笑いその布に手をかけた。


「こちらです!!」


ばっと布を取るとそこには古書があり、周りは歓声に包まれる。
しかし本にはあまり興味が無いルベリアには、あれがどれ程の値打ちものなのかさっぱり解らない。
だがここまで人を集めたくらいだ、珍しい物なのだろうと、ライトの説明を右から左へ流しながら考えていると、急に屋敷内が真っ暗になった。

始まったかと一早く古書を抱えるとライトの近くに寄る。
すると先程の二人が此方に向かってくるのが確認できた。


やっぱりなのねと溜め息を付くと同時に予備電源が作動し屋敷内はぱっと明るくなる。


「ひっ!なんだこいつらは!!」


ライトがルベリアの後ろに隠れ蒼い顔をしている。
落ち着いてくださいと言いながら目の前の人物達に目を向けた。


「ジーク=マルベルトか。実力は本物らしいな」


感じの良さそうな青年が口を開く。
隣のスタイルの良さそうな女性は片手に拳銃を持っている。


『そうですが、あなた方は?』


ルベリアが言うとニヤッと笑い、盗人だとだけ言いナイフを手に攻撃を仕掛けて来た。
ライトを突き飛ばすとベルトから一本のナイフを取り攻撃を防ぐ。


『随分元気がいいですね。』


笑いながら嫌みを込めて言うとお陰様でなと返された。
ガッと相手を弾き返すともう一人の女がライトに近付いているのが見え、報酬が貰えなくなったら困るとそちらへ向かう。

女性はバッと急に目の前に現れたルベリアに少し驚いた様子を見せたが、すぐに拳銃を構えた。

それを見たルベリアは直ぐ様その拳銃をガッと蹴り上げ、女性の手から離す。
そして骨が折れない程度に壁へと蹴り飛ばした。


「カハッ…!」


「パク!」


壁にぶつかった衝撃で苦しそうな声を上げる女性 。
声をかけた青年に大丈夫と答えると、ルベリアを睨み付けた。


そのやり取りを見ていたライトがなぜ殺さなかったと騒ぎ立てる。
ルベリアは何言ってんのばりな顔をして振り替えり、口を開いた。


『何言ってるんですかライトさん。そんなの依頼内容にありませんよ?
と言うか、貴方の護衛も本当は仕事じゃないんですが』


笑顔で言ってやればライトは額に青筋を浮かべている。
そしてわかったと言いかけた所でルベリアは忠告をする。


『あ、ライトさん避けないと、上からコイツらの仲間が来るみたいですよ』








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ