CLAP

□冬と春
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何時も……


そこで何見てんだ?


何を思って…


どんな表情(カオ)で…








最初は何も思わなかった。

只、何時もそこに居て…

何時も何かを見てる。






だが次第にお前が誰なのか…

そこに何があるのか…

何時も何を思っているのか…


気になりだした。





ある日そこを通りかかると…

お前の姿が無かった。

毎日欠かさず居たから…

お前の姿が見えないと

何だか物足りないような

変な気持ちになった。




次の日も…また次の日も…

お前の姿を見る事は無かった。


そして心の靄は溜まる一方だった。

俺は…どうしちまったんだ?

この気持ちは何だ?






取り敢えずお前が居ない時も

いつも居た場所に通ってみた。

そこは何の変哲も無い河原。

その日もたまたま寄ってみた。

何も考えず…



川のせせらぎ

鳥の囀り

春の匂い

風の擽り




自然を感じ…

身を委ね…

その場に横たわる。


何であいつが此処に居たのか分かった気がした。

自分にとって居心地が良い。



「……あれ?」


突然聞こえたその声に反応し

勢い良く跳び起きて

声の主に目を向けると…


「隊長ともあろう方がこんな所でお昼寝ですか?」


「お前……」


何時もは横顔か後ろ姿しか見る事の無かった表情が

今ハッキリと目に焼き付いた。



日だまりのように温かい笑顔…

桜のように可愛らしい頬…

小川のように輝く髪の毛…

小鳥の囀りのような綺麗な声…

風に乗り漂う花のような香り…


まるで…


「初めまして…ですね?」


そうまるで…


「…俺の事は知ってるのか?」


「勿論ですよ。」


『春』そのものだ…。



何故俺が此処までお前に興味を持ったのか…

分かった気がする。

俺は例えるならそう…

『冬』

だろう。

髪の色、瞳の色、斬魄刀、

松本と雛森には性格も…って言われてるが…

とにかく連想させるものは氷。

俺は冷たさ、

お前は温かさ、


まるでお前とは逆だな。




「日番谷隊長って不思議な方ですよね?」

「は?」


突然掛けられた声に思わず間抜けな声が出て笑われたが、そのまま続けさせた。


「斬魄刀は氷雪系で皆さん『冬』を想像しますけど…」

「まぁこんな身なりだしな。」

「…私はそうは思いませんよ?」

「……どういう事だ?」

「私には…銀髪が雪を連想させるのは解りますが、その翡翠色の瞳は…まるで……」

「…何だ?」

「まるで…溶け始めた雪の間から覗いた新緑みたいで…。
これって何だか温かさが伝わってきません?」


「!!?」


温かさ…?

そんな事言われたのは初めてだ。

俺自身考え付かなかった…。

何だ…この気持ちは…

…お前が此処に姿を見せなくなった時の靄に似てる。

ただ…

あの時とは何かが違う。



「日番谷隊長?」

「あっ…嗚呼。そんなの初めて言われたぜ?」

「そうですか?」

「何か前に此処座ってて思ったんです。
冬から春の変わり目って日番谷隊長みたいだな、って。」

「!!?」


ずっと気になってたんだ。

お前がいつも何を思って

どんな表情で

此処に居たのかを。



その可愛らしい笑顔で

俺の事を考えていたと…

自惚れても良いか?




…もっとお前を知りたい…。




「お前……名前は?」


「私?…私は………―」



《END?》
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