Game
□Rainbow.
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雨は嫌い。
傘を忘れれば服は濡れてしまうし、雨が降ると学校に行くのが億劫になるのだ。
それに、
「あ、雨」
エルがぽつりと漏らした一言に僕が顔を上げれば、それが合図だったかの様にすぐに僕の瞼の辺りへと雨粒が落ちた。
それを拭おうとしたけれど、雨粒は段々増えていって僕の顔を濡らした為、結局拭う事はかなわなかった。
「ちっ、早めに宿決めようぜ」
スパーダの言葉を合図に僕らは宿屋へと駆け出す。
僕は濡れる髪や服に顔をしかめた。
やっぱり雨は嫌い。
「今日はここで宿をとりましょう」
濡れた髪をタオルで拭きながらアンジュが言う。
「でも、すぐ見付こうて良かったな、宿」
アンジュの隣りにいたエルは動物の様にプルプルと首を動かして雨水を払う。
それを見たリカルドが呆れつつも、彼女を引っ張り髪をタオルで拭いてやる様を見て、僕はクスリと笑った。
その時、耳に響く雨音が強くなった気がした。
「雨、強くなりそうだな」
僕の隣りにいるスパーダの呟きに僕は雨音が響く窓のそばへと赴く。
「本当だ、雨が強くなってる」
雨は窓を乱暴に叩きつける。
その度に窓はがたがたと揺れて、雨が強い事を主張し続ける。
その様を見て、ふと窓から見える風景の切れ端に見慣れたものを見付けて、僕は驚いた。
「イリア…!?」
僕は直ぐさま周りを見渡す。
いない。スパーダやアンジュ達が談笑している場所にも、美味しい匂いが立ち込めている食堂の近くにも、もちろん宿の玄関にもいない。
殆どの時間イリアと一緒にいるコーダも宿にいるのに。
そうこうしているうちに窓の風景からイリアの姿はいなくなってしまった。
ああ、どうしてイリアはこんな豪雨の中外に出て行ったのだろう。
「傘借りるね!」
「あ?ルカ?」
気付いたら僕の体は勝手に外へと赴いていた。
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