Game

□Rainbow.
2ページ/5ページ

 


僕が雨を嫌いなのは昔の思い出が強いと思う。
…昔、雨が窓を打つこの音が、なぜだか凄く恐くて仕方がなかった。
一人で寝るのが恐くて、お母さんの部屋まで行って抱き付いていた。泣きながら。


勿論、今では恐くなくなったけれど。…いや、どうやら少しは残ってしまったらしい。…と今の僕は思った。


まさか、雷まで鳴くなんて思わなかった。


「うっわぁ!?」
背後で轟いた雷鳴に僕は悲鳴をあげる。
「うわどっどどっ!」
僕が慌てる間にもう一発。
「わひゃああぁ!?」
この年で恥ずかしい。そうは思うのだが恐いのだからしょうがない。
なんで外なんて出たんだろう。そんな思いが胸を駆け抜ける。

やっぱり雨なんか嫌いだ。

取り敢えず雨を凌げる場所へと足を踏み出したその時。




天が瞬いた。鋭い轟音。
そして、僕の後方にあった大樹が文字通り、割れた。

「…………ぃ」
声をだそうとしたが、出なかった。

「ルカ!」
その時ぱたぱたと僕へと走り寄る影が見えた。イリアだ。
「………り…」
未だ声の出ない僕にイリアは捲し立てて喋る。
「あんた大丈夫?生きてる?凄かったわねぇー雷。いきなりルカの背後に落ちるんだもん」
「………ぃり…」
「私ルカ死んじゃったかと思ってびっくりしたわよ。やっぱし雷鳴ってる時に木の近くは駄目ねー」







「…イリア、何時から見てた?」
僕の口からやっと出た言葉は問いだった。
「え?…ぁ…えっと雷が落ちてた時にルカを発見して…」
僕はイリアの目を見た。目が泳いでる。


…つまり、イリアは僕が雷にあたふたする最初の頃から見てたのだ。きっと。

…なんて、最悪なんだろう。
僕は深くため息をついた。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ