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□儚い笑顔10
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1.ふと見れば、キミは笑う





「見て下さいユーリ!花畑ですよ!!」

クオイの森に広がる花畑
きっと花畑を初めて見たのだろう。そのまま花畑へとかけていって、エステルは子供の様にはしゃいだ

「前来た時は花畑なんて見なかったよね」
「あぁ、今回は奥まで来たしな」

カロルの言葉に相槌をうつと側にいたリタがエステルに駆け寄る

「エステル、ギガントモンスターがここら辺に出たって話なんだからあんまり一人で行動しない!」
「凄いですリタ!本でしか見た事の無いお花がたくさん!!」
「…全く」
そうは言っているもののリタの顔は笑っている
リタはとことんエステルに甘い


「んー…モンスターはいないみたいねぇ」
「あら、じゃあ少しゆっくり出来るわね」
レイヴンとジュディスの言葉が引き金となって、カロルはエステルの元へ走り出す
それにゆっくりとした足取りでレイヴンとジュディスがついて行く


「…皆元気だな」
こちらを見上げるラピードに俺は小さく苦笑した
 





花の香りがする
甘い香りだが、それはさほど苦にならない

花畑に腰を下ろした俺はそう思った
ラピードに関しては少し鬱陶しそうにしているが…

「ユーリもこちらに来ませんかー?」

遠くでエステルが叫ぶ
俺は彼女に軽く手を振ったが、その言葉に応じて立とうとはしなかった

彼女は相変わらず笑っていた





ふと見れば、いつも彼女は笑っている
起こる出来事に毎回嬉しそうに

知らない事を知る事が嬉しいのだろう
本で知った知識をじかに見るのが嬉しいのだろう


だったら、良かったと思う

帝都から連れ出した側の俺としてはそう思う




…あぁ、それならば
俺の方はどうだ?
エステルを連れ出す事などせずに、ラピードと俺だけで帝都を出ていたのならば



「―クゥン」
その時ラピードが鳴いた
見ればエステルが俺の側まで来ている
「ユーリ」
相変わらず笑っているエステルは俺の目の前でちょこんと座った
同時に、カサリと頭上に落ちる音

「初めて作りました!」

とても嬉しそうにいう声に俺は頭に落ちたそれに触れ、ああと呟いた
 
「…花飾りか」
「カロルに教えて貰ったんです。…不格好なんですけど」
「そんな事はねぇよ」

頭にあるせいで花飾りは見えない。しかし、頑張って作ったという事は分かる
そんなものが『不格好』な筈はない

「…ありがとう、ユーリ」


それを聞いて照れた顔をしたエステルを見て、俺は思った

考えられない、と
彼女がいないまま帝都を出た自分を、その先に見える筈の今の自分を
彼女がいたから仲間が増えたし、彼女がいたから未来を見据えられた

そう、思った




「しかしだ、エステル」

俺は頭に付けられた花飾りを取り、エステルの頭に付けた

「ユーリ?」
「こういうものは男じゃなくて女が付けるものだ」


やっと見る事の出来た花飾りは、確かに上手いとは言えないものだった
けれどその花飾りは、可憐で、とても素晴らしく、そして彼女に良く似合う

俺にはそう見えた
 




あれですね、…甘くねぇな
てゆうかユリエス…かなぁ?
むー…難しい

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