Game

□Escapism.
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熱い火の海にいたからであろうか、外の風は冷たかった。

「ありがとう御座いました!!」
少年の母親は涙を滲ませ、少年を抱き締めた。

それを笑顔で見つめた後、未だ燃え上がる家屋へと振り返った。

未だに少年は泣き続けている。
可愛らしい顔を悲痛に歪め、ただ火の中を見続けている。



…まるで私の様だと思った刹那、思いはただ火の中へと注がれた。



「…私も…かなり馬鹿のようだ…」
苦笑まじりに私は呟いた。


「カイ様、住民の救助が終わりました」
「いいえ、まだです」
報告に来てくれた騎士に笑顔を向けると、その騎士は何故か困ったように頬を染める。
「…しかし住民は一人残らず」
「一人…いえ一匹残っています」
変える事なく笑顔を向ける私に、なにか不穏な気配を感じたのか騎士は顔を歪めた。
「一匹とは……まさかカイ様!?」
「行って参りますね」
間髪を入れず走りだす
「無茶です!カイ様!!」
自身を呼び止める声が聞こえたが足は止めない。







たかがペット…と誰もが止めるだろう事は分かっていた。
私も多分そうするだろう。
でも"それ"はあの少年にとっては大切な『者』と気付いて…


「失う事は…とても悲しい事ですから」
私の本心の言葉は誰にも聞こえない。







私は火の真っ直中へと駆け出した。


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