Game

□舞桜
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「わぁ……」

「どうしたんだい?」


背後からかけられた声に少女は猫に振り向いた


「…桜が…綺麗だなぁ…と思って」


青白い月に照らされた桜を見ながら微笑する

どちらかというと桜よりも少女を見ながらチェシャ猫はにんまりと返した

「そう?桜は血を吸うよ」

「Σしないよ!!」

「するよ。吸った血で桜は咲くのさ」

「…そっちの桜と…一緒にしない!!」


雰囲気が一気に戻…壊れた

あまり(かなり)空気を読まないチェシャ猫らしい言葉でもある…



「…何でそういうこと言うかなぁ…」


軽いため息をつく



「…………」

「…………」

「…………」

「……(気まずい…)…」

「…………」

「…………」


「…そんなに綺麗かい?」


ややあって気まずい静寂の後にぽつりとチェシャ猫は言った


「チェシャ猫は綺麗って思わないの?」


ほっとしながらおずおずとにんまり顔を見ながら言うと


「―…――……」


「えっ?」


アリスは聞き返すがついにチェシャ猫の言葉を聞く事は叶わなかった





「っ…!」

突然吹いた春風にチェシャ猫の言葉は溶けてしまったから


「…ここは寒いね。帰ろうか」

突然するすると先に歩き出すチェシャ猫


「ち…ちょっとチェシャ猫…」


慌てて小走りで追いかける


「さっき何て言ったの?」

「…………」


「……チェシャ猫…?」

「…何だいアリス?」

そこにあるのはいつもと変わらないにんまり顔



「……何でもない」

「そう?」




「……ねぇ…チェシャ猫?」

「何だいアリス?」

「また…行こうね…来年も…二人で」


月光に照らされたチェシャ猫の顔がほんのり赤いのは目の錯覚だろうか?



風にかき消されてしまいそうな小さな少女の言葉に


「僕のアリス…君が望むなら」



猫は耳元でそう囁くのであった





桜は散りゆき消えていくけれど

描いた未来に
君はきっといる



fin.
 

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