春は私の好きな季節だ。




窓から差し込む光は暖かく、穏やか。
城の庭園には様々な花が顔を覗かせ、私を楽しませてくれた。



そして今回も。
私が復活させた時と同じような容貌で、咲き乱れるハルルの木が目の前にある。


またひとつ、春が好きになりました。








「綺麗だな」
背後から青年の声。私は彼の方へ向き直り、微笑んだ。
「はい。凄く綺麗です!」
「そりゃ良かった」
なら連れてきて良かったと言う青年。それに目を細めて、私は再度大樹を見上げた。

―――ユーリと一緒だから、もっと綺麗です。

その想いは心の中だけ呟いて。

「来年も、また来たいです」
思わず口に出た言葉に青年は直ぐに返す。
「ならまた来れば良い」
「そうですね」

出来るならまた青年と一緒に来たい。そう思うのは私の我が儘だろうか。
そう思っていたら肩を叩かれた。振り向けば、意地悪そうな青年の姿。

「お姫様には護衛が必要だろ?」

その言葉に、驚いた。その後きたのは純粋な喜び。
つまり、それは…

「はい、護衛必要です!」
その返答には意外だったのか、青年は目を丸くした。
しかし直ぐにまた意地悪そうな顔を彼は見せた。けれど先程よりも嬉しそうな表情で。

「また来年、な」
「また来年、です」




また一つ、春が好きになる。

.


拍手ありがとうございました!
↓コメントと一緒に送れます



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ