shousetuokiba
□主人公は影武者勇者
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「僕の影武者になってもらえないか?」
風が吹ききった丘の上で――あの野郎は呟いた。
その目は頼みごとをする目線ではなく、殺そうとしていた獲物に対しての哀れみの目。
最高の慈悲を与えてやる。生き残るためにはそうするしかない。そう、言われているように感じる。
強い力をもって、オレを縛る。
「君は強い。それに、外見も僕に似ている。ここで君を殺すのは惜しい。是非、僕の影武者に」
「なぜ……影武者が必要なんだ?」
ふと疑問を感じて、オレは静かに問う。
「てめぇくらいの強さなら、影武者なんて――不必要なんじゃねぇのか?」
こいつは強かった。オレが一番知っている。戦ったオレが、一番よく知っている。
「なあ……どうなんだ?」
「それはね――」
オレの問いにかすかな笑みを浮かべて、勇者は影武者に答えた。
「僕は……もう長くないからだよ」