shousetuokiba
□主人公は影武者勇者
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1幕/
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「よお勇者! 元気ねーぞおいおいおい! 何かあったのか?」
「別になんでもないよ、拳闘士。ちょっと……考え事をね」
「それならいいんだがよ。なんだか最近、お前疲れてるみたいだぜ? 休むときはきっちり休まないと勝てる戦いも勝てない。しっかりしてくれよ……魔王城は、すぐそこなんだぞ?」
「ありがとう。大丈夫、明日には治るから」
「そうか……ま、早く寝ようぜ。明日のためにも」
お前のためにもな――。
そういうが早いか、拳闘士は眠りについた。
魔王城の見える位置に貼ったテントに、夜の月の明かりが差し込む。
オレの隣では拳闘士が寝ている。その隣には、魔法使いと剣士。どちらも、明日に備えてもう寝ていた。
つまり――起きているのは、オレ一人。
今が、絶好の好機ってやつなんだろう。もし居なくなっていた事がバレたら、寝つけなかったから鍛練してた、とでも言えばいい。
「…………行くか」
誰にも気付かれないように、誰にも見付からないように、
オレはテントを出て――近くの茂みに向かった。