shousetuokiba
□主人公は影武者勇者
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「よう、本物。調子はどうだ?」
茂みの奥のほら穴に、あいつはいた。いつも通りのオレを見下したような目に――
「そうだね、今なら魔王を倒せる気がするよ」
――死にそうに痩せほそった体で。
「笑うなら笑いなよ……僕の影武者。影武者より弱い本物なんて、本物とは言わない、ってさ」
「ひねくれたな、お前。オレと戦った時のお前は――もっと勇者らしかった」
勇者は。
こいつは……不治の病を抱えていた。
そのことに気付いた時には、もうこいつは勇者になっていて。仲間もいて。
とても、途中リタイアなんて出来る状態ではなかったらしい。
「勇者だって完璧じゃないさ。君の前にいる僕のようにね――ところで、口調は直ったかい?」
「ああ。最初の頃はよく魔法使いの奴に疑われたけどな。なんとか……お前の口調は習得した。」
最初の頃は自分のことを「オレ」と言ってしまったりして、よく疑われたな――影武者生活の苦労が、嫌でも思い浮かんでくる。
「お前の戦闘スタイルも身に付けたし、仲間と連携も取れるようになった――時間は、かかったけどな」