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□ゆめをみる貝殻。
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リストラとトラリス@
作・坂月和闇
動物達がくらす森の中、リスのトラリスはいっしょうけんめい走っていました。
「よいしょ、よいしょ、おおいそがしだよ、全く。こわあいトラさんに怒られないうちに、おとどけものをとどけなきゃ」
トラリスは、木のみきにあいていた小さな穴をとおります。この仕事をしっかりとがんばらないと、帰ったあとトラのリストラにリストラされてしまうからです。
トラリスは目の前のみずたまりを見て立ち止まりました。あぶないあぶない、おとどけものをぬらしたりしたらまちがいなくリストラだ。
「まわり道になるけど、しかたない、かな、さて」
早くとどけなきゃ。トラリスはまた走りはじめました。
夜になりました。葉っぱのあいだから、きれいな月が顔をのぞかせています。葉っぱがじゃましてきれいな月が、トラリスからは半分くらいしかみえません。
トラリスもリストラのように体が大きかったらいいのに、とトラリスは思いました。
おとどけものは、なんとかとどけおわりました。だけど、体があせでびっしょりで、なんだか嫌な気分です。
でももっとがんばらないと、リストラにリストラされてしまう。
なにも出来ずに、リストラされてしまうトラリスをはたらかせてくれているリストラのためにも、トラリスははたらかなければいけないのだ。
「明日も、がんばらないと、よし」
トラリスは、月に向かって小さなこえで語りかけ、家へと戻っていきました。